研究課題/領域番号 |
15K03126
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
北見 宏介 名城大学, 法学部, 准教授 (10455595)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 公法学 / 司法省 |
研究実績の概要 |
本研究の第2年度である2016年度においては、前年度における「今後の推進方策」欄で示した通り、合衆国政府内における各法執行担当機関をめぐるケーススタディに着手した。特に大統領府との関係が前面に表れた事例、かつ合衆国最高裁での判決が示されたものとして、TVA v. Hill 判決(1978)、および選挙区割り訴訟に係る1960年代の諸事件を取り上げて検討を行った。 前者については、政府内における政策と法解釈の対立に係る、《 大統領府-内務省-政府関係法人たるTVA-司法省 》という構図の下で、内務省の法律顧問をはじめとした各々の法務担当職員が関与したブリーフや、当事者の回顧を検証するという手法を通じて、判決の背景に存在していた、法務職員による各機関の主張形成と相互調整の作用の一断面を提示することができた。他方、後者については、《 大統領-法務機関としての司法省-法執行機関としての司法省(市民的権利局)》という構図の下で、大統領の政策的関心を推進する形で法務職員の作用が機能する局面を示すことができた。これらの作業を通じては、近時において、かつてに比して各機関の法律顧問が、大統領府との間でより直接的な関係を構築する傾向がみられることをうかがい知るに至った。 他方、わが国での法務職員に状況に関連しては、複数の自治体内の有法曹資格職員とコンタクトを取ることができ、その現状認識、問題意識等に関する質疑を行い、当初の期待に沿う情報を得ることができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記【研究実績の概要】欄に記載したとおり、近時においては各政府機関の法律顧問室が、大統領府、とりわけ大統領府内の法律顧問スタッフとの間の関係を強めているようであるが、他方で、16年度中の合衆国における政権交替後には、本研究の対象との関わりでも注目すべきいくつかの事象が生じるに至っている。こうした事象にみられるごときアクチュアルな問題との関係での検討の必要性は、本研究の開始時点では自身も十分には認識していなかったため、これらの視点に基づくフォローが今後追加的に求められることとなる。この追加的な検証の分だけ、当初見込んでいた本研究課題の作業量との比較では、進捗状況として遅れているものと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
上述の、近時の動向を意識しつつ、各政府機関における法律顧問室について、特に執行府内の機能論、大統領府との関係を対象とした検討の比重を若干高める形で、今後の研究を進めていく方針である。その際には、類似する議論が高まりをみせていた、1980年代から90年代において諸論者が発していたモデル像とすり合わせる形での検証を行うことになることを想定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究対象とするアメリカ合衆国において、特に政権交替に伴う形で、いくつかの吟味を要する司法省をめぐる事象が現れるに至った。このため、かの国における議論が一定程度進展したしかるべきタイミングで文献調査を行うべく、2016年度の使用を次年度にスライドさせることとした。このため、次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の研究計画に基本的には沿いつつ、アメリカ合衆国における議論状況に目を配りながら、新刊の文献の購入の比重を高める形で使用することを予定している。
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