研究全体としては、伝統的に国家に対する保障であるとされる人権(基本権)が、私人(市民)の間においても効力をもつかという、人権の私人間効力ないしは私法上の人権の効力とよばれているテーマについて、私法関係のなかでも労働関係に焦点をあてて検討を行った。日本の議論に大きな影響を与えてきたドイツのボン基本法のもとでの判例を中心に検討したところ、労働法に管轄をもつ連邦労働裁判所は連邦憲法裁判所の立場を1984年に受入れ、さらに、連邦憲法裁判所が発展させてきた基本権保護義務(基本権を保護する国家の義務)という考え方も採用しているが、個別の人権に関しては、異なる判断を示すこともあることが明らかになった。
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