本年度は、最終年度として、国内の水道事業について研究が遅れ気味であったので、それを補充するような研究を行うと同時に、着実に成果を論文というかたちで出していくという観点から、ドイツ法(都市建設及び国土整備)の分野における最近の変化の状況を解明することに取り組んだ。 水道事業については、その更新に関して、調査を行った。また、水道法の改正や小規模水道についても文献を中心とする調査を行ったが、現段階では論文を公表するには至っていない。 他方、ドイツ法に関しては、基本法(憲法)における「均質な生活関係の創出」要請の法的な位置付けやその具体化について、昨年得られた成果を活かしながら、それを深めるかたちで研究を行った。とりわけ、本年度は、ドイツにおける鉄道改革(ドイツ国鉄の民間化)及び郵便改革(電気通信の民間化)を取り上げることで、インフラストラクチャーの運営に関して国家がどのような「責任」を負うものとされているかを明らかにしていった。具体的には、基本法87e条・87f条の解釈・運用を見ていくことになるが、本研究によって、これらの規定は「均質な生活関係の創出」を憲法レベルで具体化するものであること、これらの規定の解釈・運用を巡って社会国家原理から離れようとする立場もそれなりに有力であることを、明らかにできた。 尤も、インフラストラクチャーの維持・更新を含めてであるが、一国内における地域的な差異が生じることがどこまで国家が介入しないことが許容されるかという限界については、本年度の研究のなかで十分に明らかにすることはできなかった。その意味で、ドイツ法の現状について、社会国家原理から離れようとする立場が有力に説かれていることは確かであるが、それがどこまで許容され得るものであるかを具体的に示すことはできていない。
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