研究課題/領域番号 |
15K03132
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研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
山田 健吾 広島修道大学, 法務研究科, 教授 (10314907)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 参加手続 / 手続的公正 |
研究実績の概要 |
イギリス及びオーストラリア行政法において、行政決定過程の参加手続はpublic consultation 手続として実施される。イギリスにおいては自然的正義、オーストラリアにおいては手続的公正として論じられる行政手続の適正化の要請が、両国においては、public consultation手続には適用されないことが判例法上確定している。 オーストラリア環境法(学)は、環境行政決定の参加手続につき、以上の手続的公正の議論も含めて、環境秩序制御に相応しい法理の再構成を行っている。第一に、オーストラリア行政法(学)は、手続的公正が原則として参加手続に及ばないとするが、オーストラリア環境法(学)やニューサウスウェールズ州の環境裁判所は、public consultation手続に手続的公正の適用の可否を論じる余地を認めている。第二に、学説及び環境裁判所の判例は、環境影響評価過程につき、その情報提供的機能を強調するのではなく、開かれたdeliberativeな手続として位置づける。この点、ニューサウスウェールズ州の環境影響評価過程におけるpublic consultation手続は次のような特色を有する。すなわち、第一に、public consultation手続には、誰も(any person)が参加できることが実定法上保障されており、様々な主体がこの手続に関与することができる。第二に、この手続の手続的瑕疵につき、誰もが異議申し立て及び訴訟を提起することが認められている。 同手続はコモンローではなく、制定法によって創出されたものである。誰もが、環境影響評価過程への参加とともに、手続的瑕疵の是正を行うための訴訟を提起することを制定法上認められているのである。オーストラリア環境法においては、救済も含めて以上の手続を主観化するのではなく客観化することで、手続の適正化を試みていると解釈することも可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)イギリス及びオーストラリアの行政法及び環境法における手続の適正化要請の法理の到達点及びその課題について確認することができた。ウロンゴン大学での在外研究中に、同大学の研究者やウロンゴン市の環境保護団体の代表者へのインタビュー等を通じて、環境行政決定における参加手続の法理の課題や運用実態の一端について知見を得ることができた。 (2)アメリカ行政法及び環境法における適正手続及び参加手続の適正化要請に関する資料を収集し、それについての検討を進めることができた。 (3)平成28年度中に予定していた、アメリカ行政法及び環境法研究者へのインタビューの実施が、同年度中での日程調整が難航し次年度に実施することになった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ニューサウスウェールズ州の環境省に出向いて、補充調査を行う。併せて、アメリカン大学の行政法研究者及び環境法研究者にインタビューを行う。 (2)以上の補充調査を実施するとともに、必要な資料を収集・検討し、環境行政意思形成過程における適正手続と手続的地位の救済に係る新しい進化した法理を提示する。 (3)最終的な研究成果については、その成果物を論文として完成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度中に、ノースカロライナ大学又はアメリカン大学を訪問して、同大学の行政法及び環境法研究者にインタビューを実施する予定であった。しかし、アメリカン大学の研究者と連絡を取り、インタビューの承諾を得たが、日程調整が難航し、本年度中のインタビューの実施ができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度9月中に、アメリカン大学を訪問し、行政法研究者及び環境法研究者にインタビューを実施する予定である。併せて、連邦環境保護庁も訪問し、同職員にもインタビューを実施することを予定している。
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