1970 年に確立した公害対策基本法制は、国及び地方公共団体を公害行政における公共性を担う主体として位置づけていたが、環境基本法制定後は、事業者、国民・住民及び民間団体も含めて、公共性の担い手である環境秩序制御主体として再定位することが課題となっている。かかる制御主体を環境行政意思形成過程に正統に組み込んでいくためには、同過程を各制御主体の法的性質に相応しく、かつ、公正かつ適正なものとなるように制度化するとともに、各制御主体の手続的地位の侵害に対して、適切な救済方法を用意していく必要がある。 オーストラリア、イギリスおよびアメリカにおいては、わが国と同様に手続的公正原則の適用が権利利益保護参加や民主主義的参加手続に当然に認められているわけではない。しかし、これらの国においては、その濃淡はあれ、環境合成意思形成過程への参加者が参加手続の結果としての環境行政決定を受容することを容易化する手続の在り方が意識的に議論され、制定法上または運用上様々な工夫がなされている。参加手続における私人の手続的地位への侵害に対する救済方法も制定法あるいは判例法を通じて形成され、わが国におけるそれに比べてより手厚いものとなっているといってよいであろう。 以上のような比較法の成果とわが国における学説及び判例法理を踏まえるならば、権利利益保護参加と民主主義的参加手続の双方につき、個人の尊厳に対する手続的配慮を内容とする手続の適正化が憲法上要請されていると解したうえで、参加手続の要否や実定法上の参加手続の内容、さらには手続的地位の侵害に対する救済方法に関し、かかる適正化要請の見地から見直していく必要がある。
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