研究課題/領域番号 |
15K03135
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中川 淳司 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (20183080)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地域貿易協定 / 規制協力 / 環太平洋連携協定(TPP) / 包括的経済貿易協定(CETA) / 世界貿易機関(WTO) / プライベート・スタンダード / グローバル・ガバナンス |
研究実績の概要 |
第2年目に当たる本年度は、地域貿易協定を通じた規制協力の事例研究として、平成28年2月に署名された環太平洋連携協定(Trans-Pacific Partnership, TPP)、平成28年末に交渉妥結し、平成29年2月に欧州議会が承認したカナダEU包括的経済貿易協定(Comprehensive Economic and Trade Agreement, CETA)という広域FTAを取り上げて、これらの地域貿易協定における規制協力の内容を詳細に比較検討した。 具体的に取り上げたのは、これらの協定における、税関手続と貿易円滑化、衛生植物検疫措置(SPS)、貿易の技術的障害(TBT)、投資、サービス貿易、電子商取引、競争政策、国有企業及び指定独占、知的財産権、労働、環境、規制の整合性(TPP)、規制協力(CETA)の各章である。従来のFTAやWTO、二国間投資協定(BIT)の対応する規定を参照しながら、これらの協定における規制協力の枠組みの構成と個別の規制協力の取決め・制度を詳細に検討した。 分析の結果を「TPPと日本 第1回~」(『貿易と関税』平成28年6月号から毎月連載中、単独執筆)、「TPPコンメンタール」(『貿易と関税』平成28年10月号から毎月連載中、分担執筆)などの日本語の研究論文、英文の複数の研究論文として公表した。そのほか、日本経済新聞(「経済教室」平成29年1月12日)など、マスメディアに論説やコメントとして公表した。また、平成28年の5月(バンコク)、7月(厦門、ヨハネスブルグ)、9月(東京)、10月(ソウル、バンコク)、平成29年2月(バンコク)の計7回、国内外で開催された国際研究集会で分析結果を報告した。平成28年12月には東京大学で「プライベート・スタンダードとグローバル・ガバナンス」に関する国際シンポジウムを企画・開催し、シンポジウムの記録を平成29年3月に東京大学社会科学研究所リサーチシリーズ62号として刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
地域貿易協定を通じた規制協力の分析対象として、今日最も先進的な内容を盛り込んでいる2つの広域FTA(TPPとCETA)の交渉が妥結し、これらの協定の条文を詳細に分析することができた。 TPPに関しては後述の通り『貿易と関税』誌に平成28年6月より毎月連載で、TPPにおける規制協力の内容を分析した詳細な論文を掲載しているほか、日本関税協会の協力を得て、TPPの条文分析を行う研究会を組織して、平成28年度を通じて毎月開催し、TPPの全30章の条文分析を終えた。研究の成果を「TPPコンメンタール」と題して、『貿易と関税』誌に平成28年10月より毎月連載している。 国内外の学会などの研究集会で計7回、地域貿易協定を通じた規制協力に関する研究発表を行ったほか、本務校で「プライベート・スタンダードとグローバル・ガバナンス」をテーマに国際シンポジウムを企画・開催し、シンポジウムの記録を取りまとめた編著(英文)を公刊した。 地域貿易協定を通じた規制協力に関する英文の研究論文を2本公刊した。 規制協力を含めたTPPの詳細な内容分析と背景の分析、今後の動向に関する英文の単著を出版する契約をRoutledge社と締結した。最終年次である平成29年度中に原稿を出版社に送り、平成30年度の早い時期に刊行の予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年次である平成29年度の前半は、地域貿易協定を通じた規制協力に関して、国内外の学会などの研究集会で研究発表(4月15日東大国際法研究会、5月12日世界法学会研究大会、6月5日アジアWTO研究ネットワーク、8月ソウル大学、9月英国ウォーリック大学)を行うほか、TPPにおける規制協力の内容を分析した『貿易と関税』誌の連載論文を完結させ、同じく『貿易と関税』誌に連載中の「TPPコンメンタール」の担当部分を執筆する。 平成29年度の後半は、英文の単著(Junji Nakagawa, TPP and Global Governance)の原稿執筆に専念し、年度内の完成を目指す。順調に進めば平成30年度の早い時期にRoutledge者より刊行の予定である。 Trump政権のTPP離脱表明、Brexitをきっかけにして、世界貿易のガバナンスのあり方についての不透明性が高まっており、メディアや官庁などから意見を求められることが多くなっている。時間の許す限り、丁寧に対応し、求めに応じて講演や論説の執筆、メディア出演も引き受けるようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
円単位の端数にわたって使い切ることができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年次である平成19年度の助成金と併せて、できるだけ端数にわたって使い切るようにする。
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備考 |
(1)は研究者が所属する東京大学社会科学研究所のウェブサイトの研究者個人の頁の日本語版、(2)はその英語版である。(3)は本年度の研究成果として記載した編著へのリンクが貼られた東京大学社会科学研究所のウェブサイトのURLである。
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