研究課題/領域番号 |
15K03136
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
寺谷 広司 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (30261944)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グローバリゼーション / 調整理論 / 人権 / 人権の主流化 / 立憲主義 |
研究実績の概要 |
本研究との関係では、「グローバル化時代における法の把握――調整理論の現代的展開」『論究ジュリスト』秋号(No.23)2017年、を公表した。従来発表していた論考の内容を展開しつつ、「グローバリゼーション」をキーワードに再構成・発展させた論文である。 この論文で依拠した理論枠組みである「調整理論」は、研究計画書で示した「国際法と国内法の関係」における重要な主張であり、本研究の支柱の一つである。以前の論考では現代的展開の可能性については将来の課題として言及することに止めていたので、上記企画の編者からの依頼を受けつつ、この部分を若干とは言え発展させることができたのは幸いであった。もっとも、既に邦語のよる研究も多い立憲主義との関わりなどは、字数制限の関係もあり十分に触れられなかったし、実際、私自身の研究自体も十分に進んでいない。 この他、部分的には他の共同研究の一部でもあるが、第6回アジア国際学会研究大会(2017年8月25-26日、於ソウル)における報告、“The Debate over Reginal Approaches to Human Rights in Asia: A Suggestion from the Perspective of Judicial Dialogue” も本研究との関係では重要であった。報告対象自体はアジアにおける人権保障システムへの提言的内容を含んでいるが、その理論的基盤としたのは「対話」の観念であり、これは、上記「調整理論」の「調整」過程を表現しているからである。 なお、計画に大きく関わる国際法協会国際人権法委員会での作業は、主題の変更もあって、本年は会合がなかった。本研究との関わりは2018年以降の展開次第となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
総じて言うと、本研究はやや停滞気味である。その最も大きな要因は別の実務的仕事を引き受けたことで、海外出張を含め、時間の相当部分をそちらに割くべき事情が生まれているからである。とはいえ、当該仕事も、本研究と関わらないわけではなく、実務的刺激によって、本研究にとっても得がたい重要な示唆を得ている。 反省点としては、昨年度同様、全体像が明らかになるだけでなく、個別に実際に書いたものを書きためることが出来れば良かったと思っている。アイディアは多いのだが、萌芽的で、短くても長くても、もう少しまとめないといけないと考えている。 著書の出版が形式的目標だが、実質的な大きな目標を変えることなく、標的を狭く絞り、既に公表している内容を深掘りすることで一つの論考とできるような方向での構成を検討すべきように思っている。他方で、この種の進め方は小さくまとまるだけの危険を含んでいて、より長期的な研究の観点からも難が無いわけではない。対象を絞りつつも、どの程度戦線の拡張を含むべきか、再検討が必要だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上記の“The Debate over Reginal Approaches to Human Rights in Asia: A Suggestion from the Perspective of Judicial Dialogue”報告は、そのままではないが、日本語の論文として公表予定で、4月時点で原稿も提出している。これによって、「対話」観念に関する研究は、少々は進む。もっとも、私からすると既存の研究も、現象面の実証的記述が中心で、「理論」と呼べるようなものではなく、この点は、作業を継続して自分で深める必要がある。 そのほか、本研究開始時には予定していなかったが、人権条約への参加や履行に関する論文、国際人権法における刑事的統制に関する論文など、本研究に必ずしも直接に関係があるとは言えないが、周辺状況として考慮しておくべき論考を別途公表予定である。これはこれでしっかり進める必要がある。本研究の意義を明確化していく上でも有用である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画書では予定していた国際研究集会(国際法協会国際人権法委員会)が開催されなかった。他方で、予算として考慮していなかったが、本研究と関係のある内容を国際学会(第6回アジア国際学会研究大会)で公表した。前者の方が予算としては大きく、差額が生じた。
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