研究期間中の成果としては、①「国際人権条約の解釈をめぐる一考察――全体論、過程論、立憲主義からの把握――」『国際法外交雑誌』(119巻4号、2021年)、②『国際法の現在――変転する現代世界で法の可能性を問い直す』』(寺谷広司編、伊藤一頼編集補助、2020年、日本評論社)及びとくに所収論文である「人権の国際保障における刑事的規律――国際人権法と国際刑事法の構造的同一性と展開の諸態様」がある。 「「国際人権条約の解釈をめぐる一考察」は、本研究における方法論的側面に関する論文であり、当研究プロジェクトの重要部分である。解釈という法学において最も重要な視角の一つに関わっており、一応の形にできたことには満足している。同時に、時間的及び原稿の字数制限上取り上げなかった部分も少なくなく、今後は、これらを補足して、既に数年に亘って公にしている論文と有機的に結合させる仕方で、新たな公表業績としたいと考えている。 後者は、刑事的統制に特化した内容及び、それを含む国際法全体に関わるものである。当研究プロジェクト開始した際には予定していた仕方の成果公表ではないものの、書籍という一つの形になったことに一定程度の満足を得ている。 本研究プロジェクトは科学研究費との関係で、形式的には終了する。しかし、6年前に構想したものとの関係では、100%実現できたとは言えない。思いがけず重要な公的任務に携わることになったこと、私的に忙しくなったこと、私だけではないかが新型コロナに関する諸事務が増大したこと等が背景にある。とはいえ、コンスタントに公表業績はあり、今後展開すべき重要な諸主題を深めることもでき、科学研究費を受給して頂いたことに一定の責任を果たせたのではないかと考えている。
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