本研究は、政府首長や公務員といった特定の地位にある個人が外交国家の刑事管轄権に服することを強制されない免除の原則に注目し、同原則の性質、内容、条件、役割などを明らかにすることを目的とした。研究最終年度は、国連国際法委員会における外国刑事管轄権からの免除に関する法典案の審議を追いつつ、法典案に対する各国の反応を分析し、免除に関する諸原則の規範性に関する論点と対立について明確にする研究を行った。免除に関する諸原則についての見解対立を明らかにする上では、国際法委員会構成員を含む学者の見解及び各国の見解とともに、種々の国際刑事裁判機関にて実務を担っている国際刑事法の法曹実務者の見解についても国際法曹実務家団体の会合に参加して調査を行った。 また、研究最終年度であることから、分析を深めつつも研究成果の公表にも努めた。金沢法学60巻2号に論説を発表した。国際法協会(ILA)から依頼され2017年度研究大会(東京大学本郷キャンパス開催)にて研究報告を行い、国家元首や政府要人が刑事管轄権からの免除を享有することが慣習法上のルールであるとの見解をアフリカ諸国が採用した上で制度を構築している点について、アフリカ国際刑事裁判所構想に盛り込まれた原則にからめて説明し問題点を指摘した。報告内容の要旨は英文でJapanese Yearbook of International Law に公表した。また、刑事裁判と免除に関するロンドンとオランダの学会に出席して議論に参加した後、ロンドンの学会主催者から招待され英語による論文を執筆した。同論文は他の報告者の論文とともにInternational Human Rights Law Review(国際人権に関する学術雑誌)の学会特集号として2018年5月に掲載されるための査読にかかっている。
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