研究実績の概要 |
初年度は調査すべき資料の網羅的収集に力を入れた。うち、ルクセンブルクについては、Paul Schmit, Precis de droit constitutitonnel, 2009, Editions Saint Paul.がとりあえずの手がかりとなる文献であることが判明し、すでに1947年の控訴院判決において条約の国内法(憲法を含む)に対する優越性が示されていることが明らかになった。もっとも、慣習法および法の一般原則との関係においては、いまだに国内法秩序における階層的位置づけが明確になっていないようである。しかし、いずれにせよ、その理由付けについては分明ではないことも判明している。 ベルギーについては、Yves Lejeune, Droit constitutionnel belge, 2e ed., 2014, Larcierが手がかりとなりそうであることが判った。本書を土台とし、関連する文献や裁判例の収集に力を入れた。 また、ルクセンブルクにせよベルギーにせよ、国内法秩序における国際法の階層的位置づけの問題をそれぞれの歴史や独立の経緯と切り離して議論することが不可能あるいは無意味であることは様々な先行研究によって指摘されているところであるため、これら両国の歴史についても、法制史に限らず政治史・経済史・社会史の観点からできるだけ深い理解を得るべく関連文献の収集と読解に努めているところである。
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