研究課題/領域番号 |
15K03145
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
福永 有夏 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (10326126)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 投資仲裁 / インフラ輸出 |
研究実績の概要 |
2016年度の前半は、インフラ輸出に関わる国際法上の問題について、概括的に検討した。特に、2015年に行った国際会議での発表のうち、インフラ輸出の国際経済紛争に係る問題を包括的に検討した1件について、論文にまとめ、国際ジャーナルに投稿した。また、国際経済紛争における条約法条約に関する問題について、研究を行った。研究の成果の一部は、研究会にて発表するとともに、国内の雑誌に論考を掲載した。さらに、常設仲裁裁判所(PCA)において聞き取り調査を行い、近年の投資仲裁に係る問題について調査を行った。このほかジュネーブ滞在の機会を利用し、世界貿易機関(WTO)紛争処理や投資仲裁に関与している研究者やWTO事務局職員に聞き取り調査を行うこともできた。なお、昨年度の「今後の研究の推進方策」で言及したTPP投資章に関する論文は、すでに提出済みであり、2017年5月に公表予定である。 2016年度の後半は、インフラ輸出に関わる投資仲裁について焦点を置いて研究を行った。特に2つのテーマについて、国際会議において論文を発表した。そのうち1つの発表では、投資仲裁における先例の位置づけを検討し、投資仲裁が一貫性を欠くと批判されているところ、実際には多くの問題について過去の仲裁判断が先例として依拠されることによって、ある程度の一貫性が確保されていること、ただし一部の問題については仲裁人の立場が大きく、先例の形成が困難となっていることを指摘した。またもう1つの発表では、近年問題となっている投資仲裁の濫用を取り上げ、投資仲裁以外の国際裁判における状況を踏まえつつ、投資仲裁における判断傾向を批判的に検討した。特に仲裁の濫用が主要な論点となったフィリップ・モリスアジア対オーストラリア事件については、国際発表に加え、国内においても発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インフラ輸出に係る国際紛争について、概括的に検討した論文やTPP協定に関連する論文を執筆し、国際会議で2回、国内会議で1回の口頭発表を行うなど、おおむね順調に進展している。 現地調査についても、WTOやPCAで行うなど、一定の成果を得ている。 英文での論文公表(予定)が少数にとどまっているので、今後の課題としたい。
|
今後の研究の推進方策 |
2017年度の最優先課題は、2016年度に行った国際会議での2回の発表を論文として公表することにある。すでに暫定版については国際会議において公表しているが、国際会議で得たコメントを踏まえて修正のうえ、2017年度中に公表又は公表確定させることを目指す。 2017年度のもう一つの目標は、インフラ輸出に係る国際経済紛争上の問題について、国際会議において発表を行うことである。主として投資仲裁に係る発表を行うことを計画している。 また、アジアにおけるインフラ輸出関連機関において、聞き取り調査も実施したい。
|