研究課題/領域番号 |
15K03148
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
吾郷 眞一 立命館大学, 法学部, 教授 (50114202)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多国籍企業ガイドライン / 規約人権委員会 / 労働CSR / 監視機能 |
研究実績の概要 |
7月7-8日両日、人権条約機関(市民的政治的権利に関する国際規約委員会)(いわゆるB規約人権委員会)のジュネーブでの会合を2日間にわたり見学した結果、多数国間条約、特にそのうちの国際人権条約が確実に実施されるために、人権条約機関が実際にどのような仕組みによって、どのような方法で運営されているかを、その機関の(一部非公開の)審議状況を見聞することによって確認することができた。人権委員会の委員が、かなり自由な形で(時には激しく対立しながらも)、委員会自体の過去の判断例に則し、場合によっては別の条約機関や地域人権裁判所の判例などを参照しながらも、人権規約の半有権的解釈の拡充に努力しているかがわかった。その過程で、事務局がどの程度の関与をするのかしないのか、ということについても一定の事実認定をすることができた。 10月13日にはパリのOECD本部で多国籍企業ガイドラインの実施を担当する責任部局の担当課長に聞き取り調査を行い、条約ではないがそれに準じる法文書をどのようにしてフォローアップしていくかについて、出版される報告書や会議資料などからは読み取れない、実務上の問題点や、OECD事務局が目指す方向性を聞き取ることができた。現実的には、各国が設置しているNCPには、ばらつきがあり、それを調整していくことが課題であることがわかるとともに、原則として任意の調整しかできないことの限界を知ることができた。ILOの行動要綱と同じように、プロモーション活動に力点があることも認識できた。 そのほか、本年度の期間中に購入した出版物を読むなかで、国際法文書の実施に向けて多様な仕組みが存在し、それぞれ独自の経験と課題を有していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究にとってかなり重要性を持つ海外出張を行うことによる研究・情報収集は、前半に市民的政治的国際規約の機関である規約人権委員会を見学することができ、また、後半には昨年度から繰り延べされていたOECDでの聞き取り調査を完了することができ、2年度までに予定されていた計画は、概ね網羅されたことになる。概ねというのは、国際法協会のスタディーグループ参加による研究遂行が、同じジュネーブで行われたILO専門家委員会と時期的に重なったことによって少し支障が生じたが、電話会議により補足をした。 昨今は、本研究に関連する企業の社会的責任、ないしは企業と人権についての書籍・論文がかなり多く発表されて来ており、それらをすべて参照することに相当の時間を要することは一つの課題である。
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今後の研究の推進方策 |
過去2年に獲得した知見の上に、さらに情報を収集し、国内外の学会等、具体的には、4月13-14日のアメリカ国際法学会大会(ワシントン)、5月13日の世界法学会(西南学院大学)、6月25日のアジア国際法学会日本協会年次研究大会(早稲田大学)、8月25-26日のアジア国際法学会隔年大会(ソウル)での知見獲得・意見交換などを通じて総合的な問題の分析を行う。11月下旬に開催される国連グローバルフォーラムで、ILA(国際法協会)のスタディーグループに参加する予定であるが、昨年同様ILOの委員会と重なる場合には、その前後に行われる電話会議で補足する。
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