研究課題/領域番号 |
15K03151
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
武田 邦宣 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00305674)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | デジタルプラットフォーム / ビッグデータ / イノベーション / プライバシー |
研究実績の概要 |
インターネットやデジタルコンテンツにかかわる産業において、競争法の適用はどうあるべきかという観点から、「デジタルプラットフォームにおける市場支配力分析」を公表した。 Google、Amazon、Apple、Facebookといったオンラインの巨人は、多種多様そして常に拡大するサービス、アプリケーション、コンテンツを束ねるプラットフォームを創出して、現在および将来の幅広い市場にその力を及ぼすようである。しかし同時に、それらプラットフォームは、それに依拠するサービス、アプリケーションなどについてイノベーションの揺籃として機能し 、また自らもイノベーションをもって競争する。そして、これらイノベーションはユーザーに多大な便益を与えている。しかもそれらプラットフォームがユーザーに提供するサービスは、無料であることが多い。そうすると、これらプラットフォームに対する競争法の適用は、過剰規制となりそうである。 以上の問題関心から、上記論文では、欧州委員会によるFacebook社とWhatsApp社の企業結合審査を通して、インターネットやデジタルコンテンツにかかるプラットフォーム(デジタルプラットフォーム)について、市場支配力分析のあり方を検討した。結論として、「イノベーション」、「データ」、「プライバシー」に注目した、デジタルプラットフォームにおける市場支配力分析のあり方を提示できたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は、順調に進んでいる。研究成果の一部は、論文として公表するに至っている。これまでの研究で明らかとなったのは、①イノベーション、データ、プライバシーを経済法上どのように評価すべきかについて、活発な議論がなされていること、そして、②これら議論が、検索エンジンに限らず、SNSやショッピングサイトなどにも、拡大していることである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の中心的論点は、「検索バイアス」である。これは、検索エンジンが検索結果の表示を操作することによって、自社のサービスを有利に扱う行為である。検索エンジンについて議論される、イノベーション、データ、プライバシーの間には、次のような関係が存在する。ユーザーは、検索語などのデータと引き換えに、検索エンジンを無料で利用する。ユーザーにとって、「データは新しい貨幣である(Data is the New Currency)」。データは、ターゲット広告に利用される。広告による利益は、検索の精度向上といったイノベーションの形で、ユーザーに還元される。ここで、「データは新しい石油である(Data is the New Oil)」。検索エンジンは、これらイノベーションにより、ユーザーの獲得競争を行う。 このような競争モデルは、検索エンジンに限らず、広く「ビッグデータの時代における競争モデル」と呼べるものである。たとえばSNSは、書き込みというデータを、ターゲット広告に利用する。またショッピングサイトは、クリックストリーム(サイト内での閲覧遷移)を、効率的な販売促進に利用する。事業者は多くのサービスから、幅広いデータを得ようとする。その結果、Google+とFacebook、Google ShoppingとAmazonとの関係に現れるように、広い市場において「イノベーションによる競争」、「データ収集による競争」が繰り広げられる。そして後者は、「プライバシー侵害の危険性」を生む。このビッグデータの時代における競争は、単なる表示の問題を超えた問題を生じさせる。これら問題のより深い解明が、次年度の課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
出版予定であった図書の発行が遅れているため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画どおりの図書を購入する。
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