アメリカ法の調査を続行し、またドイツ法の調査を開始した。アメリカ法については引き続き文献調査と判例の調査を行った。アメリカの判例法(特に最高裁判所の判例)には、コモンローにおける不法行為の成否が問題となった民間の使用者と労働者との間の事例は比較的少数であり、多くはアメリカ合衆国憲法修正第4条が直接適用される政府(州政府を含む)と公務員労働者との間の関係についてのものであることから、アメリカの公務員法制に関する文献などを収集した。ドイツ法についてはEUのデータ保護法関係及びドイツ連邦データ保護法(Bundesdatenschutzgesetz)関係の文献を収集した。また本研究の差別禁止・情報収集規制に関連して、所属する労働判例研究会において日本法での雇用形態差別に関する裁判例の評釈を発表したうえで、雑誌に論文として投稿し(「有期/無期契約労働者間の「不合理と認められる」労働条件の相違 : 日本郵便事件[東京地裁平成29.9.14判決]」ジュリスト1516号110頁(2018))、また近時の障害者雇用に関する注目すべき裁判例の状況について、特に情報取得と労働者の保護の緊張関係という視座を念頭に分析したものを、障害者雇用促進法の解説書の一部として公表することができた(永野 仁美ほか編『詳説 障害者雇用促進法 <増補補正版> 』(弘文堂、2018)第7章第2節「裁判例の状況(補足)」※ただし、このように補正版で追加した章に関しては、正しい記載方法が不明のため、研究成果報告には挙げていない)。これらの進行状況は、おおむね研究計画であると考える。
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