研究課題/領域番号 |
15K03160
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研究機関 | 高千穂大学 |
研究代表者 |
森平 明彦 高千穂大学, 経営学部, 教授 (90200435)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 独占禁止法 / 優越的地位の濫用 / ドイツ競争制限禁止法 / 需要力 / 不公正な取引方法 / 公正競争阻害性 |
研究実績の概要 |
EUにおける需要力濫用規制の具体的展開として、英国の綱領審判官・行動綱領の規制、ドイツの競争制限禁止法19条2項(同20条2項の従属的事業者の場合を含む)の規制に係わる比較法的考察を行った。その結果として、わが国において市場力規制を主たる任務とする独占禁止法の体系に位置付けられた優越的地位濫用の規定(2条9項5号)につき、相対的市場力の規制が、独禁法の法原理とされた公正な競争秩序の要請に結びつく体系的一貫性があることを明らかにした。かかる比較法的な理論的解明をもとに、現在の通説たる昭和57年の独禁研報告書に貢献をした正田/今村教授の学説は、相対的市場力の濫用が公正な競争秩序維持の規制と結びつけられる理論構築により、市場力規制の法体系に需要力濫用規制が位置付けられる先駆的な、かつ現代的意義を有する規制の基礎固めをしたものと評価される位置づけを示した。本成果は、平成29年5月刊行予定の舟田正之先生古稀祝賀論文集『経済法の現代的課題』に収録した。 また、上記の英国とドイツの規制を中心としたEUの不公正取引慣行規制の基礎理論的成果をもとに、包括的な不公正取引慣行のカタログを有する独禁法の不公正な取引方法の規制が、市場力規制の体系に位置づけられる比較法的にもユニークな規制を如何に達成したかについても理論的検討を進めた。すなわち正田/今村両学説に係わる理論的共通基盤を整理・適示し、その基盤を継受した昭和57年独禁研報告書の公正競争阻害性に係わる三分類説と不公正な取引方法の違反類型の整理により、この規制が独禁法に定着した一定の根拠を解明した。さらにかかる理論的共通基盤が、近時の競争者排除型の不公正な取引方法の規制(拘束条件付取引、取引妨害)において新たな展開を示していることを論じた。かかる成果は、平成29年7月刊の土田/舟田編『独占禁止法とフェアコノミー』に収録した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの一定の比較法的研究の成果を、日本法の解釈論に応用する段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツでは、競争制限禁止法の第9次改正が成立し、需要力濫用規制の新展開があった。これは食品スーパー(エデカ社)に対する連邦カルテル庁の訴追に対する2015年と16年の連邦高裁と最高裁判決の結果に対応したものである。 他方EUレベルでは、食品サプライチェーン規制に関し2016年1月欧州委員会から同議会へ最終報告書は、加盟国の個別規制とボランタリーベースの民間自主規制に委ねる傾向が示されている。かかる傾向に対する批判とともに、近時の規制動向理論的展開をフォローする。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本法への比較法的成果の応用に和書を中心に購入したので、洋書よりも経費が低かった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年に洋書の比較的多くの購入を予定しているため、それに用いたい。
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