本研究全体の研究成果は以下の通りである。本研究の第1の課題は、保護すべき業務委託型就業者(仮に「雇用類似の者」という)の定義であるが、これは、報酬を得るために発注者から委託を受けて主として個人で業務に従事する者であって、発注者との間に組織的又は経済的従属関係がある者としている。その詳しい定義は、保護内容との関係において確定される。 本研究の第二の課題は、雇用類似の者に対する保護の内容である。これについては、本研究は、雇用類似の者は労働者と比較して様々な困難を抱えていることを指摘し、一定の保護の必要性があるとしている。とくに、1.契約内容の決定・変更、解約、契約更新拒否、役務の瑕疵担保などの契約ルール、2.報酬の支払遅延、不払い等の報酬の支払に関する保護及び適正な報酬額の設定、3.委託就業を原因とする災害に対する補償が課題であると指摘している。その他、発注者によるセクシュアルハラスメントなどのハラスメントの対処も必要だとしている。 本研究の第三の課題は、法的保護を行う場合の方式についてである。法的保護のためには、(a)現行法の解釈による労働者の範囲の拡大、(b)現行の労働者概念の再定義、(c)ガイドラインの策定、(d)立法的対応が考えられる。本研究は、(a)の方式については結論の予見可能性が低いことから実務上の混乱をもたらすおそれがあること、(b)の方式については労働者概念が他の法領域における基礎概念でもあることから、これを再定義することは他の法領域との調整など困難をもたらすこと並びに、保護内容ごとに労働者概念を相対的に定義する説もあるが、これは行政、実務において混乱をもたらすおそれあること、(c)の方式は、既存の「在宅ワークに関するガイドライン」の適用にみられるように、認知度が極めて低いことから実効性が乏しいと思われることなどから、(d)の立法的対応をとるべきだとしている。
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