日本の雇用システムにおける「新規学卒一括採用」による終身雇用、そして企業福祉が労働者をささえ、そしてその家族は自立するまでの子を扶養する「抱え込み」が崩壊した。中退者の増加に加え、未就職者、学校卒業後の初職での非正規雇用の拡大、正規雇用者を含めた早期離職者の増加のなかで、親もまた厳しい雇用情勢にあり、家族も不安定になっている。つまり、家族と企業のなかで社会の一員となる若者を養成してきたシステムが変貌し、保護機能を果たすことができなくなり、若者は自立が困難になり、また貧困化している。 そこで、非正規雇用労働者の増加が生活保障システムに提起する問題をとりあげ、解決の手がかりを検討した。その際に、「脆弱な(vulnerable)」労働者にも自由な選択を現実的に可能にするには、経済的条件をすべての労働者に平等に整備することが、持続的な雇用社会を維持するために必要であると考えられる。低賃金労働者が拡大しているが、現役の就労期(Arbeitsphase)だけではなく、将来の高齢期にも貧困をもたらすため重大な問題である。就労期のディーセント・ワークの確立は、まさに高齢期の適切な年金権の成立の条件になることを示した。 さらに、若者が職業生活に入るための支援を、職業訓練の「労働」と「教育」の二面性から重層的におこなうべきであることを明確にした。 それは、若者が雇用に入ること自体を自己責任に委ねられることないように、国家や企業、そして組合、家族がどのような役割を担うべきか、という近年の課題をとらえるものであった。
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