研究課題/領域番号 |
15K03164
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研究機関 | 四天王寺大学 |
研究代表者 |
和田 謙一郎 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (70342235)
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研究分担者 |
平田 勝政 長崎大学, 教育学部, 教授 (10218779)
田原 範子 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (70310711)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 戦後らい法制 / 社会保障法制 / 不治の時代 / 治療可能な時代 / 社会復帰 / ジレンマ / らい予防デー / ライフヒストリー |
研究実績の概要 |
和田(研究代表者)は、主に文書資料発掘、及び聞き取り調査の結果として、「可治の時代に移行する前後のハンセン病と社会保障法制に関する考察」『四天王寺大学紀要』平成28年度(Ⅰ)第62号(2016年9月)、「司法判断からみるハンセン病問題」『四天王寺大学大学院研究論集』-第11号-(2017年3月)、さらに、これまでの研究の途中経過を示すものとして、『戦後らい法制の検証』(晃洋書房2017年3月)を発表した(すべて単著)。 平田(研究分担者)は、1930年代の「癩予防法」下の「らい予防デー」研究を推進した。平田は、平成27年度に輪倉一宏著『司祭平服と癩菌ー岩下壮一の生涯と救癩思想ー』(吉田書店2015年)の書評を『社会事業史研究』第49号(2016年3月)に発表して岩下壮一研究の課題を明確にした。平成28年度は、そのなかでも岩下の「救癩」思想が凝集されている祖国浄化論(1935年6月25日のらい予防デーの講演記録)に注目して作業を行い、分析対象の岩下作成の新聞切抜き帳(新聞記事資料)の整理・目録化の成果として、「神山復生病院所蔵のハンセン病関係新聞記事目録-朝日新聞を中心に-」『長崎大学教育学部教育実践総合センター紀要』第16号(2017年3月)を発表した(すべて単著)。 田原(研究分担者)は、当事者のライフヒストリーの聞き取りを担当している。朝日新聞のデータベースでハンセン病にかかわる課題を「ハンセン病の現在――新聞記事データベースを利用した内容分析」『四天王寺大学紀要』平成28年度(Ⅰ)第62号(2016年9月)に発表し明らかにした(単著)。加えて、平成28年度は、青森市の松丘保養園を中心に聞き取り調査の書きおこしの作業を行っている。加えて、断続的に療養所退所者の人たちへの聞き取りを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
和田(研究代表者)が平成28年夏季及び平成29年春季に身体を大きく壊したことにより、思うように療養所等でのフィールドワーク(特に文書資料発掘)ができなかったことが研究の遅れに影響している。また、聞き取り調査の対象者が高齢であり、的確に聞き取り調査ができなかったことも数多かった。そこで代表者・分担者ともに、聞き取りのみの専念、あるいは論文等執筆のみに偏ってしまったことも研究の遅れに影響している。
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今後の研究の推進方策 |
和田(研究代表者)は、時代背景を眺めながら、さらに文書資料発掘を中心にして、なぜ、戦後らい法制の改廃について行政・立法の不作為が長期にわたったか、その検証を進める。その際、療養所入所者の目線を念頭に置き、そこに存在したジレンマに注目する。「不治の時代」から「治療可能な時代」をまたいだ療養所入所者の生活の実態を探り、らい法制の改廃の大幅な遅れと偏見を助長した療養所生活の関係、そこにある排除の構造をさらに探る。生活保障との関係において法整備を誤れば、制度的に新たな少数を出現させるという排除の構造を解明していく。これらを研究論文としてまとめ、雑誌論文等に投稿する計画である。 平田(研究分担者)は、戦前(1930年代)の「癩予防法」下の「らい予防デー」と戦後(1950年代)の「らい予防法」下の「救らいの日」の比較検討を行う計画である。この研究を、和田が担当する戦後らい法制の検証につなげていく。また、平成28年度の平田の研究実績にもとづき、その分析結果を『社会事業史学会第45回大会報告要旨集』に「岩下壮一とハンセン病―祖国浄化論の検討―」と題する学会発表要旨(2017年3月執筆、発表は5月)としてまとめ学会発表に備えている。 田原(研究分担者)は、研究実績にも示した療養所入所者やハンセン病回復者支援センター利用者に対する聞き取り資料に基づいて、ライフヒストリーを記述し、雑誌論文に投稿する計画である。 なお、連携研究者(近藤祐昭)は平成28年3月に退職し、その後、本テーマにかかわる研究を継続していない。連携研究者については、この段階で連携研究者の役割を終えたものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
和田(研究代表者)が身体を壊し、2度のフィールドワークを行えなかったことが影響した。
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次年度使用額の使用計画 |
和田、平田、田原ともに、29年度に、当初から目標としているフィールドワークを行う。
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