研究課題/領域番号 |
15K03168
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋爪 隆 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70251436)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 刑法 |
研究実績の概要 |
本件研究「自動車死傷事故に関連する処罰規定の解釈論的研究」は、自動車死傷事故に関する処罰規定の意義について、解釈論的な見地から検討を加えようとするものである。 平成27年度においては、いわば準備的作業として、危険運転致死傷罪をめぐる判例・学説の動向について包括的な検討を進めた。まず、危険運転致死傷罪の立法過程の分析として、法制審議会刑事法部会や国会審議における議事録の内容について分析を進めた。とりわけ平成25年改正によって創設された、いわゆる準危険運転致死傷罪やアルコール等発覚免脱罪の立法経緯や審議状況について、詳細に検討を加えた。研究手法としては、必要な文献資料を網羅的に収集し、その意義について検討を加えるほか、刑事法研究者や法曹実務家との意見交換の機会を設けた。 これらの検討において、危険運転致死傷罪の新設段階、さらに自動車運転死傷行為処罰法の新設段階においても、危険な運転行為の結果的加重犯として危険運転致死傷罪を位置づける理解が一貫されていることが明らかになった。もっとも、危険運転行為の危険実現の在り方、すなわち危険運転行為と死傷結果との間の因果関係については、一般論に終始しており、必ずしも具体的な検討が十分ではないように思われた。 次年度(平成28年度)においては、これらの作業を踏まえて、さらに自動車運転死傷行為処罰法の罰則について、判例・裁判例の検討を進めることにしたい。また、あわせてドイツ刑法315条c(道路交通危殆化罪)との比較分析にも着手したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究実施計画に即して、危険運転致死傷罪をめぐる立法過程、判例・学説の動向について、必要な調査・分析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度以降においても、国内外の文献資料を幅広く収集して、それらについて理論的な分析を加えることにしたい。また、現実の判例・裁判例に即して、自動車運転死傷行為処罰法の犯罪類型について、これまで必ずしも明確にされていない解釈論的な論点について、理論的な検討を深める予定である。その際には、刑事法研究者、法曹実務家との意見交換の機会を積極的に設けることも、平成27年度の研究と同様である。
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次年度使用額が生じた理由 |
和書・洋書などの物品を購入する際に、4000円程度端数が生じたため、次年度に繰り越した次第である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度執行予定額とあわせて、物品費、旅費等に使用する予定である。
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