本研究では、民法改正を契機として、民法の財産関係を巡る規律のエンフォースメント手段として刑法が果たしうる機能を検証した。法秩序の統一性の観点から、刑法は民法の違法評価に従わなければならないとしても、民法上の違法性概念の相対性、多義性から、個別具体的な検討が不可欠である。そのような視点から、民法改正により導入された約款規制と詐欺罪の関係について検討を行い、詐欺罪の成立範囲を示した。 また、民法と刑法の責任範囲を画する故意および共謀の限界について、裁判例の分析を行い、その判断手法における問題点を指摘した。
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