研究課題/領域番号 |
15K03175
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
嶋矢 貴之 神戸大学, 法学研究科, 教授 (80359869)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 性犯罪 / 強盗 |
研究実績の概要 |
本年度は、暴行脅迫による重大犯罪のうち、性犯罪(強姦罪・強制わいせつ罪)に重点を置いた研究を引き続き行い、学会ワークショップでの共同報告を行い、論文2本の成果を公表した。 第94回日本刑法学会・ワークショップ4「性犯罪処罰の在り方」(オーガナイザー樋口亮介)において、「性犯罪における暴行脅迫について」の研究報告を分担した。旧刑法期から網羅的に性犯罪の判例・裁判例を調査し、「抵抗困難化」に足る暴行脅迫という定式につき、そこに見られた判断手法を3つに類型化し、それぞれの当否について検討を加えた。すなわち性交随伴行為を超えるか否かで排除する類型、客観的抗拒困難性に着目する類型、被害者の主観的抗拒困難性に着目する類型に分け、前2者の手法が批判を受けてきた結論を生み出したものであり、被害者心理への着目がより適切な判断を生むことを提言した。その上で、心理への着目方法につき、更なる類型化を行い、現在の裁判例で新たにみられるタイプの判断につき、考慮要素をより明確にするように努めた。同報告は、報告の際の質疑や、その後の共同研究を踏まえてさらにリファインし、法律時報「小特集 性犯罪処罰の基本問題」の一論稿として公表した。 また、性犯罪をめぐる立法・判例・解釈論につき、旧稿で旧刑法時代を取り扱ったのに続き(昨年度業績参照)、現行刑法下の戦前期における動向を調査し、献呈論文集に寄稿した。そこでは、我が国の性犯罪規定の問題点は戦前から認識されていたことと、その問題点は本質的には大きく変わらないまま、限定的に判例実務により対応がなされてきたことを示した。あわせて改正刑法仮案について、立ち入った研究を行い、仮案研究の意義についても述べることができた。 性犯罪をめぐる刑法改正が予定される中、社会的に意義のある成果をあげることができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研計画の重要部分であった性犯罪について、研究実績に記載のとおり、学会でのワークショップ報告、それを踏まえた論稿を2本公表することができ、所期の成果をあげることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
すでに一定の成果をあげていた強盗罪について、さらなる研究を深める機会をえた。すなわち、2017年の学会において、「強盗罪の諸問題」としてワークショップをオーガナイズし、学会会員と共同で、暴力的財産犯という大きなくくりで英米、独墺瑞との比較法研究及び日本の沿革をさらに辿る研究を行い、報告する予定である。また、注釈刑法第3巻(公刊予定)において、強盗罪の条文をすべて担当するため、基本となる部分以外の周辺的規定についても研究を深めることができ、他の暴行脅迫による犯罪との比較が進められると考えている。また、比較法に関して有益な知見も得られる見込みである。 あわせて性犯罪の立法判例解釈論の戦後編、特に改正刑法草案における性犯罪規定に関する研究にも着手している。
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次年度使用額が生じた理由 |
出張予定が年度をまたぐこととなったため。及び購入予定の本の購入が年度をまたぐこととなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
東京への研究打ち合わせのための出張と書籍の購入を行う。
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