本年度は最終年度にあたるため、業績の公表に努めた。昨年度、刑法学会および学内WSで実施した、強盗と恐喝の総合的な系譜・比較研究報告について、複数の媒体で公表した。学会でのWSについては、昨年度脱稿済みであった記事が刑法雑誌に掲載された。また、学会、学内WSを経て、それらの参加者からのフィードバックを取り込み、報告の全体を特集として、神戸法学雑誌に掲載した。 強盗と恐喝の基本的関係、強盗の時間的拡張、客体の拡張、致死傷の取り込みの有無について、旧刑法制定から現行刑法制定までを代表者が担当し執筆し、アメリカ法・イギリス法につき星氏(首都大学東京)、ドイツ法、オーストリア法、スイス法につき深町氏(立教大学)が担当し、総合的立体的な理解を提示することができたものと考えている。 研究期間全体を通じては、以上以外に、性犯罪に関する共同研究を進め、学会WSで報告者を担当するとともに、法律時報、古稀論文集に複数の業績を公表した。性犯罪規定の改正と時期的に重なり、立法過程、立法直後の議論に基礎資料を提供し、解釈論に裨益する成果をあげることができたと考えている。 裁判員裁判を意識した研究成果も複数公表することができた。初年度に学会の共同研究での報告者を担当し、それをもとに刑法雑誌への論稿の掲載、さらに正当防衛についてはその後をフォローアップした成果を法学教室に掲載した。 以上の成果を総合するべく性犯罪に関する研究書の執筆と強盗に関する注釈書の執筆を進めており、これらも次年度以降に順次公表する予定である。
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