研究課題/領域番号 |
15K03179
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研究機関 | 白鴎大学 |
研究代表者 |
平山 真理 白鴎大学, 法学部, 教授 (20406234)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 刑事裁判 / 再審 / 第三者機関 / 裁判員制度 / 被害者参加制度 / 取調べの可視化 / 司法取引 |
研究実績の概要 |
本課題研究では刑事裁判における誤判の原因究明とこれらの問題はいかにすれば解消されるかに焦点をあてるとともに、刑事司法への市民の信頼をどのように獲得すべきかについて研究を進めてきた。とくに、昨今刑事司法改革として、取調べの可視化のありかたへの社会的注目が高まっていることから、取調べの録音録画を公判でどのように証拠調べすべきかについて重点をあてて研究を行った。この研究過程で、2016年2月~4月に宇都宮地裁で行われたいわゆる今市事件の裁判員裁判を傍聴し、この裁判を素材として今後の刑事司法制度の在り方を論じる研究をまとめている。 国内調査としては、再審事件の弁護を受任した弁護士等によって開催されたシンポジウムや勉強会に参加をし、研究推進のうえで重要な情報や資料の入手をおこなうことができた。 また、平成27年度は現時点の研究成果の発表と今後の研究推進の指針を得るためにも学会発表の機会を多く持った。6月にワシントン州シアトルで開催された、Law and Society Association2015年大会、8月に東京で開催されたThe 4th Conference of East Asian Law and Society Conferenceで報告を行った。とくに後者では、研究代表者自身がChairとしてセッション「Emerging Issues in Criminal Procedure: Lay Participation, Police Interrogation and Victim Inputs from a Comparative Perspective」を企画し、日本(研究代表者)、アメリカ、ベルギーの刑事法学者を報告者とし、またアメリカの法社会学者を指定討論者として設定した。そこでは、刑事司法制度の比較研究の場として報告者同士、また会場との間で充実した意見交換ができたとともに、本課題研究計画を進めるうえで重要な指針を得た。 さらに、研究成果の社会還元という観点から、裁判員制度がどのように実施されれば刑事司法制度への市民の信頼が高まるかというテーマで、専門家を招へいし、一般公開講演会を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題研究の研究計画のうち、平成27年度は予定していた海外調査を行えなかったが、平成28年度には海外調査をアメリカ、カナダにおいて行う予定である。また、国内調査に関しては、これまで再審請求支援やその弁護を担当してきた弁護士とのネットワークを、平成27年度に参加した勉強会等通じ拡げることができた。平成28年度は予定していたこれらの弁護士への聞き取り調査を進めていく予定である。 また、研究成果の社会発信については、海外の学会発表の機会を利用することで順調に行うことができた。また、研究成果の社会還元については、専門家を招へいし一般公開講演会を1回開催した。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度はとくに海外調査と国内の弁護士へのインタビューを集中して行う。海外調査については、カナダの誤判事件弁護協会(Association in Defense of the Wrongly Convicted)、ブリティッシュ・コロンビア大学ロースクールのイノセント・プロジェクトを訪問し調査する予定である。さらにカリフォルニア州サンタ・クララ群検察官事務所を訪問し、検察官による公訴調査ユニット(Internal Integrity Unit)を訪問し、調査する予定である。また、国内調査については、引き続き刑事再審請求の支援や再審における弁護を受任した弁護士に対し聞き取り調査を行う。聴き取りを行う調査地としては東京、静岡、大阪、鹿児島を予定している。 また、国内外で開催される学会において、研究成果を報告し、そこで得られた指針をもとに今後の研究計画をさらに発展させる予定である。2016年6月のLaw and Society Association大会(New Orleansにて開催)、9月のAsian Law & Society Association大会(Singaporeにて開催)、11月のAmerican Society of Criminology(New Orleansにて開催)における報告がすでに採択済みである。 さらに、研究成果の社会還元を目的として、再審や裁判員制度、司法取引、刑事手続における被害者等、刑事司法制度に関するテーマで専門家による講演会を3回程度開催し、これらをひろく一般公開したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は予定したほどには書籍、資料を購入しなかった。また、平成27年度は海外調査を行わなかったので、海外調査のための予算を平成28年度に合わせて、予定していた海外調査を行うために使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は国内調査、海外調査、国内外の学会報告のために旅費を使用する予定である。国内調査は再審請求事件の支援、弁護を行った弁護士に対する聴き取り調査を東京、静岡、大阪、鹿児島で行う予定である。また、国際学会の報告(アメリカ、シンガポール)、海外調査(アメリカ、カナダを予定)のための旅費として使用する計画である。さらに、研究成果の社会還元という目的から、刑事司法制度に関わるテーマで一般公開講演会を3回程度開催する予定であり、そのための謝金、人件費としても使用する予定である。
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