研究課題/領域番号 |
15K03184
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
山口 直也 立命館大学, 法務研究科, 教授 (20298392)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳科学 / 神経科学 / 前頭前野 / プルーニング / 認知統制機能 / ローパー判決 / グラハム判決 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、特に子ども(少年)の脳の発達に関する脳科学・神経科学の最新の知見を分析して、当該知見が米国少年司法の運営に与えた影響についての基礎的研究を行った。 具体的には、人間の脳は類型的におよそ25歳までは発達を続けることが分かり、少年の脳は器質的にも機能的にも未成熟で、脳から分泌される神経物質が成人に比べてアンバランスであることがわかった。 前者については、脳細胞が集中する前頭前野の灰白質(grey matters)におけるプルーニング(pruning)が終わっておらず、25歳程度まで継続しており、そのことが、危険の評価、衝動・感情の規制、計画化、意思決定といった、人間が確実かつ任意に行動をコントロールする能力、いわゆる認知統制機能が未だ完全ではないことの理由であることが明らかになった。また同様に、大脳の白質(white matters)に集中する脳神経繊維、すなわち脳の細胞体からの命令を伝達する部分が完成されておらず、そのことが、認知統制機能に関わる前頭前野の細胞体からの命令が不完全な形でしか実現しないことの理由であることも明らかになった。 一方、後者については、少年の脳は、報酬に向けて異常に駆り立てられたシステムを構築する一方で、危険及び害悪を限定的にしか排除できないシステムを構築しており、これらは、前頭前野の器質的未発達に基づく、認知統制システムの脆弱性に由来していることが明らかになった。これによって、少年の脳は、報酬に向けて異常に駆り立てられたシステムを構築する一方で、危険及び害悪を限定的にしか排除できないシステムを構築していることがわかった。 本年度は、脳科学・神経科学に関するこれらの知見が米国連邦最高裁で肯定され、同裁判所が少年に対する死刑及び仮釈放なし終身刑を残虐かつ異常な刑罰にあたって憲法違反であるとしたローパー判決及びグラハム判決の内容の分析についても着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は大学内役職(副研究科長)につき、研究に従事する時間がかなり少なくなったことにより、当初の予定通りの研究が十分に行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
研究時間の確保が第一の課題である。できるかぎり学内業務を整理して、集中的に研究課題に取り組めるようにスケジュールを調整する予定である。そのうえで、夏期期間における海外調査が行えるようにしたいと考えている。
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