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2015 年度 実施状況報告書

黙秘権放棄が認められる法的・制度的条件についての研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K03185
研究機関立命館大学

研究代表者

渕野 貴生  立命館大学, 法務研究科, 教授 (20271851)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード黙秘権 / 虚偽自白 / 共犯者自白 / 被告人の証人適格 / 被告人質問 / 取調べ
研究実績の概要

第一に、黙秘権に関連する刑事手続上の制度について行われてきた先行研究を検討し、それぞれの制度が有する理論的課題を確認した。とくに、協議合意制度と被告人の証人適格制度、被害者参加制度に焦点を当てて、関連する文献を幅広く収集し、検討を進めた。協議合意制度においては、恩典を示されて協力する被疑者・被告人が、恩典が得られない場合の不利益を懸念して、供述するかどうかの自己決定ができなくなるおそれがあること、さらにいったん供述してしまうと、恩典剥奪と虚偽供述処罰のリスクから、事後にそれと反する供述を行うことが、非常に困難になることが明らかになった。また、被告人の証人適格制度に関しては、被告人が、証言することを選ばなかった場合に、裁判員や裁判官から、事実上の不利益推認を受ける危険性を慮って、証言せざるを得ない立場に追い込まれる可能性があることが明らかになった。
第二に、アメリカにおいて被告人が答弁取引をする際に、真に任意に自己負罪供述を行っているのか否かについて、実態を把握するために、ワシントンDC裁判所において、予備審問手続等の傍聴を行い、あわせて、アメリカの刑事訴訟法学者から聞き取り調査を行った。その結果、予備審問等において供述の任意性を確認する手続がかなり形式的なものにとどまること、アメリカにおいても、恩典の利益を得るために、虚偽の自白がなされる事案が少なくなく、司法取引制度に対しては、学説からも多くの批判がなされていることが明らかになった。
第三に、日本において、被害者参加制度が被告人に対して、供述することに対する事実上の圧力になっていないかどうかについて、実態を把握するために、刑事事件の経験が豊かな2人の弁護士から、聞き取り調査を行った。その結果、被告人が被告人質問で萎縮する場合があることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

計画にしたがって、協議合意制度や被告人の証人適格制度に関する先行研究の収集および分析を行うことができた。
また、アメリカにおいて、ワシントンD.C裁判所を複数回傍聴し、予備審問等における黙秘権放棄の手続の実情について有益な情報をえることができた。さらに、アメリカの刑事訴訟法研究者から聞き取りをして、司法取引制度に対してアメリカでも黙秘権保障の観点から問題点が指摘されていることについて有益な情報を得ることができた。
第三に、日本においても、2人からではあるが、刑事事件に豊かな経験のある弁護士に聞き取りを行い、被害者参加制度が被告人の供述態度に与える影響について、実情を知ることができた。

今後の研究の推進方策

第一に、アメリカのアレインメント、司法取引、被告人の証人尋問が黙秘権との関係でどのように整合的に説明されているのかという点および、その説明に理論的問題点はないのかという点について、文献を収集・検討するとともに、アメリカの刑事弁護人に対して聞き取り調査を行う予定である。あわせて、引き続きアメリカの勾留手続やアレインメント手続ならびに陪審公判について傍聴し、アメリカの刑事実務上、黙秘権保障が実効的になされているかどうかの実態把握を進める予定である。
第二に、日本において、公判前整理手続における主張明示、被害者参加制度等が被告人の黙秘権の実効的行使を阻害する要因になりうるか否かについて、理論的研究を進めるとともに、刑事事件に豊かな経験を持つ刑事弁護人に対する聞き取り調査の数を増やして、実態把握を進める予定である。なお、協議合意制度を含む刑事訴訟法改正案が成立した場合には、同制度のもとで、弁護人がどのような弁護実践を行うことになるのかという点についても調査する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 取調べ依存からの脱却と公判中心主義の徹底―被告人の証人適格制度を素材にして2015

    • 著者名/発表者名
      渕野貴生
    • 雑誌名

      刑法雑誌

      巻: 55-1 ページ: 74-88

  • [雑誌論文] 手続二分論―予断排除と量刑の科学化2015

    • 著者名/発表者名
      渕野貴生
    • 雑誌名

      法と心理

      巻: 15-1 ページ: 16-22

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] New Japanese Law on the Visual Recording on Interrogation of the Custodial Suspect2015

    • 著者名/発表者名
      渕野貴生
    • 学会等名
      The 4th EALS Asian Law and Society Conference
    • 発表場所
      早稲田大学(東京都・新宿区)
    • 年月日
      2015-08-05
    • 国際学会
  • [図書] 刑事訴訟法理論の探究2015

    • 著者名/発表者名
      白取祐司、斎藤司、緑大輔、京明、内藤大海、徳永光、石田倫識、高平奇恵、伊藤睦、関口和徳、笹倉香奈、中島洋樹、渕野貴生、豊崎七絵、川崎英明
    • 総ページ数
      264(184-200)
    • 出版者
      日本評論社

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公開日: 2017-01-06  

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