研究課題/領域番号 |
15K03186
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
松尾 誠紀 関西学院大学, 法学部, 准教授 (00399784)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 刑法 / 不作為犯 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、法益危殆化状況における救助促進システムとして不作為犯論を機能的に再構築するという最終目標を達成するために、結果帰責性のない不作為犯(真正不作為犯)の作為義務内容の解明を目的とするものである。 このような問題意識に基づき、2015年度においては特に、結果帰責性のない不作為犯の一つである、道路交通法における負傷者救護義務違反罪を題材とし、その義務内容について研究を行った。その成果として、松尾誠紀「道路交通法における負傷者救護義務違反罪の義務内容」法と政治(関西学院大学)66巻2号227-252頁(2015年8月)を発表した。同論文においては、負傷者救護義務違反罪に関する学説・判例を詳細に検討し、不作為による殺人罪等の不真正不作為犯とは異なる、負傷者救護義務違反罪の特徴を描き出した。その上で、確かに負傷者救護義務違反罪は結果帰責性を有しないけれども、その義務内容の結果関連性までが否定されることはないことを明らかにした。これまでの学説では、真正不作為犯は単なる行為義務違反として捉えられ、詳細な検討がなされてこないままであったことから、本論文が示した研究成果は、同論点に関する今後の検討に大いに影響を与えるものと思われる。 上記の他に、本研究課題内の別の個別的検討課題に関し、2015年12月に開催された研究会おいて研究成果報告を行い、また2015年11月と2016年3月に新たな研究成果発表に向けた研究打ち合わせを行った。それらの成果は2016年度において発表できる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題に関する初年度であったが、資料収集及び調査が順調に進んだ。何より研究成果をすでに発表できたことは、その順調さを表していることと思われる。新たな研究成果に向けての準備も順調で、2016年度の公表に向けてさらに調査を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題である、結果帰責性のない真正不作為犯の作為義務内容を解明するために、今後は、第一に、保護責任者不保護罪の義務内容を題材とし、まずはそれに関する文献資料、判例資料を収集し検討する。その際には、(保護責任者)遺棄(致死傷)罪の要件解釈を論じる文献資料・判例資料、また保護責任者不保護罪と不作為による殺人罪の関係性を論じる文献資料・判例資料も広く収集し、個々の議論の中でなされた本研究課題との関わりのある検討箇所も拾い上げていきたい。 第二に、ドイツ刑法の不救助罪の義務内容を解明するため、それに関する文献資料、判例資料を収集し検討する。不救助罪に関してはドイツ学説において特に議論が盛んであるため、わが国の真正不作為犯のあり方にも大いに参考となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
収集した資料について協力者を得ずに整理することができたため、その分、人件費を抑えることができたため。また、図書についてコピーで入手できた資料もあったため、図書購入費を抑えることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
現時点での研究状況からすると、複数の研究成果を発表できる見込みである。研究成果公表の前には研究打ち合わせを複数回行う必要があるため、そのための出張旅費として使用する予定である。
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