研究課題
基盤研究(C)
従前の不作為犯論は不真正不作為犯に問題関心を集中させている。そこで、真正不作為犯をも包括的に捉えた機能的な不作為犯論の構築が必要との問題意識から、特に本研究課題では、結果帰責性のない不作為犯(特に真正不作為犯)の作為義務内容の解明に取り組んだ。その結果、その作為義務の帰属主体が限定的であるべきこと、保護法益理解に基づく作為義務内容の特定の仕方、結果回避可能性の要否、そして、真正不作為犯処罰のあり方について基礎づけることができた。
刑事法学
不作為犯論は不真正不作為犯論に終始しているのが現状である。その結果、不真正不作為犯の特徴が、あたかもすべての不作為犯論の特徴として理解されている場合も見受けられる。しかし、不真正不作為犯が不作為犯のすべてではない。真正不作為犯についても、法で定めればいかなる作為義務でも認められるものではなく、その正当化についてはなお一層の検討が必要である。本研究課題の考察によって、真正不作為犯をも含めた包括的な不作為犯論の構築の契機を提供することができた。