研究課題/領域番号 |
15K03187
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山本 哲生 北海道大学, 法学研究科, 教授 (80230572)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 保険 |
研究実績の概要 |
アメリカにおいて、合理的期待保護の法理と並んで、よくあげられる約款解釈原則として作成者不利の原則がある。本来、作成者不利の原則は約款解釈に限られない解釈原則であるが、約款解釈では異なった用いられ方がなされている。すなわち、作成者不利の原則とは、契約があいまいであるときには作成者不利に解釈するというものであるところ、通常の契約では、複数の合理的な解釈があり、優劣がつけられない場合に作成者不利に解釈するという形で用いられるのに対して、約款では、そのような場合に限らず、複数の解釈が可能であるなどあいまいであれば直ちに作成者不利に解釈するという形で用いられるとされる。 アメリカでは、作成者不利の原則はなじみ深いものであるが、近時、この原則に対しては批判も強い。たとえば、次のようなことがいわれる。消費者は約款を読まないのだとすると、約款があいまいであることは消費者には大きな意味をもたない。それにもかかわらず、あいまいであることを理由として作成者に不利な解釈をすることにいかなる合理性があるのか。消費者が約款と読むとしても、あいまいさをなくすようにしようとすると、技術的で専門的な用語を用いた方が正確な表現が可能になるが、それは約款内容を消費者にますます分かりにくくするということである。 このような議論は、消費者が約款を読まないとして、保護すべき合理的期待は何かという問題にもつながりうるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アメリカでの約款解釈原則についての議論の分析を進めている最中である。アメリカでは、特に消費者契約の解釈、内容規制について、近時も多くの議論がなされており、これらの議論の整理、分析を着実に行っていることから、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
合理的期待保護の法理、作成者不利の原則等のアメリカにおける約款解釈原則の理論的基礎をめぐる議論の分析をさらに継続することで、約款解釈における消費者の期待を法的にどのように位置付けるかの分析枠組みを確立することに努める。 その際には、理論面だけではなく、日本で問題となってきた条項の具体的解釈も念頭におきつつ、実践的な解釈指針を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
図書の出版時期等との関係で文献の収集につき、年度末までに間に合わなかったものがあるので、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
間に合わなかった文献を直ちに購入し、執行する。
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