最終年度に実施した研究の成果は次の通りである。本研究課題の直接の対象である論点と同趣旨の論点が問題になった水産業協同組合法改正についても考察し、本研究を遂行する際に比較の視座に置いてきた。その考察結果として2021年度に口頭で報告した内容をとりまとめて2022年度に公表した(下記〔雑誌論文〕の欄記載)。これによって研究に厚みをつけることができた。 期間全体を通じた研究の成果は次の通りである。規制改革関連会議や学界・実際界で近時提起されている論点のうち本研究課題ではとりわけ、(1)農業協同組合中央会の廃止とそれに伴う中央会監査の廃止、(2)法形態の変更(例えば組合から株式会社への変更)後の制度設計、(3)2015年農業協同組合法改正の陰の主役といいうる組合員制度、(4)組合のガバナンスのあり方、(5)地域社会との関わりといった論点を取り上げた。 農業協同組合法制定後70年以上が経過し、同法、同法を背後から支える(はずの)理念、同法の規律対象である現実、以上三者に齟齬があることを、上記論点の考察を通じて具体的に明らかにした。その上で法規制のあり方を考える際の指針を私見として示しつつ、論点によっては具体的なあり方に踏み込んで私見を提示した。上記論点のうち法的に解決されていないものは、規制改革関連会議等でも現在に至るまで断続的に議論されている。それゆえ実際界の関心も頗る高く、本研究課題の成果は、机上に止まることなく実際界で議論する際にも意義を有すると思われる。 本研究課題の遂行によって得られた成果については、農村協同組合のあり方について模索している中国の学術界からも関心を寄せられ、日本学術振興会・中国社会科学院共催シンポジウムで発表する機会を得た。
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