日本の国内会計基準は収益費用を計算することを主眼とするものであるため、その計算に基づく日本の会社法の剰余金分配規制は、「留保利益」の配当と位置付けられる。この「留保利益」は残余権として位置づけることができ、株主の会社支配に適切なインセンティブを与える制度として正当化できる。 資産・負債の計算を重視する国際会計基準(IFRS)のもとでは、現在の剰余金配当規制は、資本金・準備金の金額を債権者のために会社内に留保しておくという実財産維持のための制度と位置付けられる。しかし、債権者保護のために強制される留保財産がなぜ資本金の額なのか理由がない。IFRSの導入は、現行剰余金分配規制の正当性を揺るがす。
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