研究課題/領域番号 |
15K03194
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
角田 美穂子 一橋大学, 法学研究科, 教授 (10316903)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 説明義務 / 目論見書責任 / 自己決定権 / 脆弱な消費者 |
研究実績の概要 |
適合性原則を実現する私法理論の研究については、まず第一に、金融商品取引の領域において研究を発展させることができた。具体的には、平成27年10月の金融法学会シンポジウムにおいて「投資信託の販売・勧誘に関する私法上の問題」を報告する機会に恵まれた。報告では、わが国の投資信託市場を席巻してきた毎月分配型投資信託の分配金に元本払戻しが含まれていることの説明義務が問題とされた裁判例を取り上げながら、投資信託の販売・勧誘資料を作成し、商品を組成している投資信託委託会社の目論見書責任と説明義務との関係について見取り図を提案するとともに、「損害」概念が変容している可能性を指摘した。報告準備過程において、私法学会シンポジウム「不法行為法の立法的課題」報告グループ・現代不法行為法研究会において、純粋経済損害が問題となる局面での自己決定権侵害を念頭に、不法行為における自己決定権の法的保護のスキーマについて試論を提示する機会を得たことも幸いであった。 第二に、消費者法の領域における適合性原則の理論化の可能性を探る準備作業として、EU消費者法においてより高度な法的保護を必要とする人的集団に用いられるようになっている「脆弱な消費者」について、法的規範として論ずる可能性を追求した論文を訳出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
投資家保護法理の展開については、理論的検討の成果を公表することができたほか、10月の金融法学会シンポジウム報告では、夏期海外出張の成果も踏まえた問題提起ができたことで、一定の手ごたえを感じている。 消費者法のフロンティアについても、適切な文献を訳出したことで、今後の研究の足掛かりを得られた。 証券取引所の民事責任に関する海外研究者との共同研究については、共同研究者の進捗が若干遅れていることもあって、3カ国の検討を踏まえて結論を導出するのには少なくともあと半年を要する状況である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の最重要課題に、証券取引所の民事責任に関する海外研究者との共同研究をすえる。目下、進捗状況としては約5割であるが、半年で目処を立てる予定を引き続き遂行したい。 人の行為の機械化については、Fin TechやBitcoinに関する研究会への参加を通して、情報収集に努めつつ、システム提供責任などの検討を本格化させる。 欧文での研究成果発信として、金融危機後、デリバティヴ商品の販売・勧誘の問題をめぐる訴訟が各国で提起されているが、わが国において特徴ある判断を示した裁判例を紹介する論稿を英語で執筆し、海外誌に投稿した(査読の結果待ち)。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の使用につき事務方との連絡調整が不十分であった。
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次年度使用額の使用計画 |
民法・消費者法・資金決済法等の法改正関連の書籍購入に充てる。
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