研究課題/領域番号 |
15K03194
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
角田 美穂子 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (10316903)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脆弱な消費者 / 適合性原則 / 取引所の民事責任 / プラットフォーマー |
研究実績の概要 |
本研究の主要テーマ「取引の電子化がもたらす法的課題の検討」の主柱をなす海外研究者との共同執筆論文「取引所の義務違反による民事責任―――ある誤発注事件をめぐる独日法の比較」(独語版)が完成し、ドイツで定評のある比較法雑誌(Rabels Zeitschrift)に投稿したところ掲載が決定し、査読委員会より高い評価を得ることができた。同論文は、(1) 電子取引システムを提供する証券取引所と取引所に参加する業者の関係を扱うものであるが、これは日本では私企業間の契約であるがドイツでは公法・私法関係の混合であり、そのような領域の特殊性を踏まえたプラットフォーマーの責任論を展開したものである。くわえて、(2) 競争環境の変化を踏まえて検討されている証券取引所の改革論議にも一石を投ずる可能性があるほか、(3) 証券取引所の規則や受託契約準則の法規範性、(4) 金融監督上の過誤による国家賠償責任といった新規性のある論点を扱っている。 もうひとつの主要テーマである「適合性原則の新たな展開」については、EU法における「脆弱な消費者」の展開を追う一方、わが国の金融監督行政の改革とともにキーワードとなっている「フィデューシャリー・デューティー」と民事責任論の関係についても検討をおこなった。後者については、わが国の金融庁が参照したEUの動向を参考に、金融商品の製造物責任の可能性を論じ、近時のわが国の裁判例のなかに同様の考え方の萌芽を見出せないかと問題提起をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外研究者との共同執筆論文は、予定以上に時間を要した。理由は、取引所を巡るドイツの法制度が予想以上に複雑であったために慎重な分析・検討を必要としたこと、アメリカ法に関する情報の収集・検討が進まなかったことにある。路線を変更して日独法比較で論文を完成させたが、独自性の高い研究となったので日本語・英語でも公表を予定している。 取引の電子化・自動化の問題については、ロボット工学者とタッグを組んで専門家をゲストに呼んでおこなったリレー鼎談を出版する計画を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
取引の電子化・自動化がもたらす法的課題を明らかにするために、ロボット工学者とタッグを組んで専門家(数学・AI、金融、情報法、宇宙法、劇作家、労働経済学、医事法、哲学)をゲストに呼んでおこなってきたリレー鼎談の成果を書籍として刊行する。これにより、各々の分野で進行している議論の基盤が形成され、相互の意見交換がしやすくなることが期待される。また、書籍出版企画でご協力いただいた専門家が組織している研究フォーラムとの交流も予定している。 上記リレー鼎談を通して民法研究者として気になったテーマにつき、法学的に掘り下げた論文も執筆する予定である。具体的テーマとしては、プラットフォーマーの責任論、IoT時代における情報機器利用者の責任論、データ所有権を予定している。 以上のほか、平成28年度に完成させた誤発注事件をめぐる取引所の民事責任に関する海外研究者との共同研究の成果(独語)を、日本語、英語でも公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
取引の電子化、AI・ロボットがもたらす法的課題についての連続鼎談のゲスト・テープ起こしの謝金の予算を確保していたところ、日程調整の結果、平成29年度に鼎談を実施することになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
取引の電子化、AI・ロボットがもたらす法的課題についての文献が急増しており、主要文献を蒐集する必要がある。そのほか、適合性原則に関する研究を英語でも公表することを予定しており、翻訳の謝金にあてる。
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