民法改正と投資家保護法理の研究に加えて、ロボット・AIという科学技術がもたらす新たな法的課題に取り組んだ。民法改正については、定型約款、法律行為、賃貸借、委任などのサービス契約の法的規律について解説と今後の課題を検討した。投資家保護についてはプロ顧客の法的保護を扱った最高裁判決(最判平28・3・15)やロボアドバイザーがもたらす法的課題について検討を加えた。前者は、民事ルールとしての適合性原則の研究がもっぱらリテール顧客を対象としてきたのとは異なる局面について検討を加えるとともに、広義の適合性原則と金融商品販売法、信義則上の説明義務違反に基づく不法行為責任との関係について、見取り図を示したものである。 ロボット・AIと法に関する研究成果の中核は、ロボット工学者と共にホスト役となって、東大入試に挑むロボット開発を指揮してきた数学者、ロボット演劇の劇作家など多彩なゲストに迎えて行ったリレー鼎談を編んだ著書『ロボットと生きる社会――法はAIとどう付き合う?』(弘文堂、2018年1月)を刊行したことである。一連のリレー鼎談を通して得られた知見、とりわけプラットフォーマーの責任論という視点から、スマートフォンにインストールしていた電子マネーサービスの不正使用に関する高裁判決に検討を加えた。 証券取引所の電子取引システム障害により膨大な損失が発生した場合に、誰がどのような法的責任を負うのか―――日本で裁判になった事件がドイツで起きた場合の法的処理について、ドイツ人研究者と行ってきた国際共同研究"Haftung fuer Pflichtverletzungen von Boersen---Deutschland und Japan im Vergleich"を、2018年1月施行された法改正(MiFiD-II)に対応の上で刊行した(近く日本語版もNBL誌にて公表予定)。
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