本年度は、3年間の研究期間の最終年度に当たるため、研究成果のとりまとめに向けた研究活動を実施した。 まず、比較法的研究については、前年度は比較対象とする3つの地域のうち台湾と韓国から研究者を招聘して国際セミナーを開催したが、本年度は残る1つの地域である中国から能力概念について精通した2人の研究者を招聘して、国際セミナー「中国における『能力』概念の研究」を開催した。本セミナーでは、国内の研究分担者及び研究協力者、さらに一般の参加者を交えて、中国と日本の「能力」概念の移動について活発に議論が行われた。このように2年にわたって開催した国際セミナーによって、調査対象であったすべての地域に関する比較法的研究が一応完結したことになる。その結果、いずれの地域においても「能力」概念については、統一的な理解がなされておらず、それに伴う課題が少なからずあり、その整序を図る必要性が浮き彫りとなった。これらの成果については、今後、まとめたうえで、学内の紀要等で公表したいと考えている。 また、研究代表者である宮下と研究分担者である朱は、韓国の中央法学会からの招聘を受け、2017年11月に韓国・中央大学校で開催された国際シンポジウム「高齢化社会と高齢者の消費者主権」で本研究の成果を踏まえた講演を行った(その成果は、中央法学会の紀要に掲載される予定である)。 なお、研究代表者の宮下は、わが国における問題状況を再度整理したうえで、今後の研究の方向性を示すべく、本年度末に「『消費者』としての『高齢者』への『支援』のあり方」と題する論文を本研究の成果の一部として公表した。 以上の状況を踏まえると、本年についても、当初予定した研究成果が得られたものと考えている。
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