これまでの研究をまとめ、本研究課題の目的である、支配権移転を伴う新株発行について株主総会による承認を求めるルール(総会決定ルール)の当否について分析した(主に下記学会発表1)。総会決定ルールについては、メリットはもちろん存在するが、他方で弊害については従来あまり指摘されていなかった。そこで、本研究では、まず、これらについて理論的な観点から整理し、特に支配株主が違法な行為などをしている場合に取締役会が全く対抗できなくなることに注目した。また、(総会決議は求められず)差止めに委ねられる規律と、総会決議を求める規律で、株主構成によってどのように帰結が変わるのかを分析した。その上で、ルール形成に関わるアクターのインセンティブも踏まえると、(1)現状では総会決定ルールの導入の必要性は否定できないが、(2)総会決定ルールのみに依存すると、かえって取締役会レベルでの規律や裁判例の発展を妨げる可能性があることを示した。そして、これまでの(特に近時の)大規模な第三者割当てに対する規律の強化は、裁判所が不公正発行について十分な審査をできていないことを背景としてなされてきたことを明らかにした。その上で、現状の主要目的ルールを解体し、端的に利益相反に着目した審査基準とすることなどを提案した。
また、本研究のうち、立法過程に関する部分は下記論文1において応用し、英文査読誌に掲載が決まっている。さらに、判例の分析を通じて得られた知見は下記論文2・図書1に反映されている。
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