研究課題/領域番号 |
15K03208
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
伊東 俊明 岡山大学, 法務研究科, 教授 (60322880)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 主張責任 / 弁論主義 / 補助参加 / 詐害防止参加 / 訴訟追行権 |
研究実績の概要 |
これまでの研究は、民事訴訟手続、とりわけ、主張過程における当事者の責務としての情報・証拠の収集・提出に関する規律に照準を合わせた検討を行い、その結果、情報・証拠の収集・提出をめぐる規律を構築するためには、原告・被告という訴訟法的法律関係の基礎にある実体法的法律関係に着目する必要があるという示唆を得た。 本研究は、単なるスローガンになりがちな「手続保障」に関する議論を充実させるためには、判決に至るまでの審理過程の有する意義および機能についての再検討が必要となるのではないないか、という問題関心に基づくものである。具体的には、主張過程と証明過程とでは、当事者に保障されるべき権能の内容が異なるのではないか、主張過程を単に証拠調べの対象となる争点を確定するための手続と捉えることでは不十分ではないか、弁論主義/職権探知主義ないし主要事実/間接事実という議論の枠組みは、主張過程における当事者および裁判所の行為規律にとっては不十分ではないか等という問題関心である。 今年度も、前年度に引き続き、以上のような問題関心に基づき、これまでの研究成果を基礎として、主張過程の有する意義と機能について、その準備作業として、「当事者」(原告・被告)としての地位にある者に付与される訴訟追行権(当事者権ないし弁論権)の内容についての検討を行った。「当事者」の訴訟追行権を分析するために、民事訴訟において「当事者」(ないし、当事者の代理人としての地位にある者)でないが、訴訟行為追行権を付与される「訴訟参加人」の訴訟追行権に着目した分析を行った。具体的には、我が国における訴訟参加制度をめぐる議論についての検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、弁論主義の妥当する民事訴訟における当事者の訴訟通行権に関する問題群を直接の検討対象とする予定であったが、研究を進めるにあたって、当事者の地位・権能についての規律を分析するためには、むしろ、当事者でないが、民事訴訟手続の主張過程および証明過程において、訴訟追行権が付与される地位にある訴訟参加人の地位・権限をめぐる問題を分析することが、有益であるという中間的な結論に達した。そこで、本年度は、当初の予定を少し変更して、訴訟参加をめぐる問題、具体的には、当事者に準じる地位に立つ「補助参加人」の地位・権限をめぐる問題(参加要件としての補助参加の利益に関する議論、共同訴訟的補助参加人および詐害防止参加人の地位・権限をめぐる議論など)についての分析を行った
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今後の研究の推進方策 |
残された研究期間では、これまでの研究成果を踏まえたうえで、民事訴訟における「当事者」の訴訟追行権に関する規律についての分析を行う予定である。具体的には、ドイツ法の民事訴訟手続において宣誓(Eid)制度の有する意義と機能について、法制史的な分析を行うとともに、訴訟担当資格をめぐる議論についての検討を行う。 そのうえで、これまでの議論の分析内容を相対化するために、日本法・ドイツ法とは法体系が異なるイングランド法・アメリカ法における議論、および、裁判所(ないし、それに相当する第三者)が介在しない当事者間における紛争処理手続に関する近時の議論についての検討を行う。 以上の検討を踏まえて、民事裁判における審理原則(弁論主義/職権(探知)主義)についての再構成を試みたうえで、最終的な研究成果をまとめて、その内容を研究会等で報告したうえで、論文を執筆し、公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた文献調査(海外出張)を実施することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に実施できなかった文献調査を実施する予定である。
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