本研究の目的は、実親子関係の成立・否定ルールに係る利益の再調整を検討する点にある。現在、嫡出推定・嫡出否認制度については、判例法の形成により形骸化しているとの指摘がなされている。この状況に対応するため立法提案がある。しかし、嫡出推定・否認制度の基礎にある諸利益について再調整が必要であること、新たな利益への配慮が必要になることが、十分に考慮されていない。本研究では、子の否認権を認める場合に生じる利益調整の問題について焦点をあて、出自を知る権利による基礎づけの可能性、扶養求償という新たな問題への対応を検討した。
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