研究課題/領域番号 |
15K03213
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
笠原 武朗 九州大学, 法学研究院, 准教授 (90346750)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 組織再編 / 無効 / 対価の不均衡 / 会社分割 / 債権者 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、昨年度に引き続き、瑕疵ある組織再編の効力に関連する諸問題についての研究を行い、その成果の一部を公表した。特に中心的に研究を行ったのは、組織再編において株主や当事会社に交付される対価の(著しい)不均衡がある場合に、そのことが当該組織再編の形成無効の訴えにおいて無効をもたらす原因となるのかという問題である。この問題については、まず、「合併比率の不公正と合併無効事由」において裁判例を題材として検討を行い、大まかな方向性を示した。さらに、「組織再編行為における対価の不均衡と無効の訴え」において組織再編全体を視野に入れた総合的な検討を行い、昨今の法改正の内容を踏まえると従来からの議論とそれを踏襲した多数説的な議論には問題があること、対価の不均衡を理由ないし手がかりとする無効は、究極的には諸般の状況に鑑みたケース・バイ・ケースの判断と考えざるをえないこと、そして、そのことは組織再編の無効原因として挙げられている様々な瑕疵について同様に当てはまることを示した。また、以上の問題のほか、会社分割の当事会社の債権者のうち債権者異議手続の対象となっている債権者が、法が予定する形成無効の可能性をサンクションとして行う異議申述によらず、一般法理によって会社分割の効力を実質的に否定することによって事後的救済を受けることの是非についての研究を行った(その成果は、関西企業法研究会において報告した。それをもとに、平成29年度に論文として公表する予定である)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本法上の問題については様々な問題を検討することができており、平成29年度以降も引き続き同じように研究を進めていければよい。 しかし、当初考えていたよりも、比較法的考察の材料となるべき外国法の研究に時間を割くことができず、具体的な成果物を公表することができていない。
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今後の研究の推進方策 |
日本法上の問題については、組織再編による会社の契約相手の地位への影響とそれらの者の保護について研究を進める。 外国法については、引き続き、研究課題に関する米国法の全体像を把握・描写できるように文献資料の分析を進める。
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