研究課題/領域番号 |
15K03221
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
鈴木 博人 中央大学, 法学部, 教授 (90235995)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 特別養子縁組 / 児童福祉法 / 養子法 / 民法 / 望まない妊娠 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究の中心は、日本国内における望まない妊娠をめぐる議論を把握することにおかれた。とりわけ、児童虐待防止を中心に置く平成28年改正児童福祉法の附則で、「この法律の施行後速やかに、児童の福祉の増進を図る観点から、特別養子縁組制度の利用促進の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とされている。この附則が付された平成28年児童福祉法改正は、『新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告(提言)』に基づいて行われている。したがって、この報告(提言)に至るまでに、特別養子縁組をめぐる議論がどのように行われたかの経過を詳細に追究した。 さらに、上記平成28年児童福祉法改正附則で定められた、特別養子縁組の利用促進のために設けられた「児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会」での議論をトレースした。 また、望まない妊娠ケースで、出生直後の養子縁組委託(出生直後の委託ということは、出生前から委託に同意していることになる)について、日本での実情把握に努めた。 以上のことから判明するのは、パーマネンシーの保障を基本に据えて、私法である民法上の特別養子制度を、行政法である児童福祉法にも取り込もうとする方向が目指されているということである。具体的には、身分関係の変動を伴う私法上の法律行為の申立権者に行政機関の長である児童相談所長を加えようというものであり、児童虐待という視点を切り口にして、親子関係への国の介入権限を拡大することにつながるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画立案に想定されていなかった、児童福祉法領域での特別養子制度の活用論、さらには、児童福祉法への特別用制度の取り込みといった議論がなされるようになったため、その議論を新たにきちんとフォローする必要性が生じたため。 また、日本国内での議論を整理するのに伴い、外国法研究に遅れが出たため。
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今後の研究の推進方策 |
まず、日本国内では、望まない妊娠から生まれた子も含む、実親が養育できそうにない子について、パーマネンシーの保障のために、特別養子制度が利用されるべきであるとされ、それに伴い、私法と行政法(公法)という基本的な枠組みに抵触するような議論も出てきている。そこで、当初計画では含まれていなかった、法の基本的な枠組みをめぐる議論も本研究では行うことになる。それに伴い、望まない妊娠から生まれる子の養育形態として、里親制度と養子制度との関連も整理する。 以上の諸点を追加したうえで、当初計画で示した、ベビークラッペと匿名出産それぞれの問題点の整理、および実母の匿名性確保の方策についての比較法研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
アメリカ合衆国およびカナダにおける望まない妊娠から生まれた子どもの処遇や匿名での子どもの預け入れ制度(法制度も含む)について、実地調査を行う予定だった研究協力者の現地訪問が実施されなかったため。この調査が実施されることを見込んで、本研究費の使用を抑制していたこともあって、次年度使用額が生じる結果になった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の調査、とりわけアメリカ合衆国への調査を実施するとともに、2014年施行のドイツの秘密出産法の実施状況を文献およびインタビュー調査によって行う。このインタビュー調査は、来日するドイツの家族法学者へのインタビューとベルリンでの少年局の実務家インタビューとによって行う。
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