平成30年度は、昨年度に引き続き改訂されたコーポレート・ガバナンス・コードが実務界に及ぼした影響について、実務に携わる取締役・監査役・公認会計士・弁護士・マーケット関係者等からヒヤリング調査を行うとともに、今後の課題について意見交換を行った。 また、法制審議会会社法部会で、コーポレート・ガバナンスにかかる会社法改正要綱案が取りまとめられ、平成31年度通常国会での可決成立を目指していることから、改正にいたった背景と規整の概要について研究するとともに、改正法が成立した場合の実務に及ぼす影響、および既に改訂されたコーポレート・ガバナンス・コードとの関係性等について検討を行った。 なお、コーポレート・ガバナンス・コードが採択されてから、わが国のガバナンス・システムは、制定法である会社法による規整と、ソウト・ローであるコーポレート・ガバナンス・コードによる規整という二重規整状態にあるが、このことが実務に及ぼしている影響とその是非、および平成27年会社法改正から導入された「コンプライ・オア・エクスプレイン」ルールが、いわゆる「横並び」体質が根強く残るわが国の企業風土にあった規整システムといえるのかという点について、実際にシステム構築・運用を担当している実務担当者との意見交換等を踏まえて検証を行った。 こうした研究結果を踏まえて、現在のガバナンス規整の問題、特に実務がマーケットに直結するガバナンス・コードに注視する中、法規整としての会社法が今後果たす意義についても検証を行った。 研究成果については、平成31年の改正法成立の検証を加えた上で、法政大学法学志林に成果を掲載するとともに、法政大学出版会から叢書を出版する予定である。
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