1 研究目的 本研究は、裁判外ワークアウト(倒産手続開始前に行われる事前調整)と倒産手続の連携強化による、事業再生の迅速化・効率化の推進という観点から、この点について先行的な取り組みがなされてきたアメリカ法を比較法的検討の対象として、その議論状況および実務における運用状況を踏まえて総合的に検討することにより、わが国における立法論、さらには、円滑な事業再生の実現に向けた、解釈論および運用論という側面において寄与することを目的とするものである。 2 本研究の実施状況 平成27年9月~平成28年3月まで、University of Wisconsin Law Schoolを研究拠点として実施した調査研究、ならびに、シカゴおよびロサンゼルスの法律事務所等で行った実務の運用状況についての実態調査等を踏まえ、アメリカ法における事前調整型の再建手続の類型(プレパッケージ型手続、およびプレアレンジ型手続)について分析するとともに、これらと組み合わせて活用される早期事業再生の手法として、連邦倒産法363条セールによる事業譲渡、および、商取引債権(Critical Vendor)に対する優先弁済の手法をとりあげ、その検討結果を論文(「アメリカにおける早期事業再生の手法」)として取りまとめ、公表した。 また、アメリカ法における手法を参考としつつ、わが国における、裁判外ワークアウトと倒産手続の連携強化のための方策について、おもに、両者の円滑な連携を可能とするための手続構造を中心に検討を進め、その検討結果を法律雑誌における特集(法律時報11月号「事業再生と倒産手続の現在と将来」)の一環として論文(「私的整理と倒産手続の連携強化」)にまとめ、公表した。 なお、上記論文を取りまとめるにあたり、平成29年9月にウィスコンシン州マディソン、およびシカゴにて、実務における運用状況等についての補充調査を実施した。
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