平成29年度の研究においては、平成27年度及び28年度における検討を踏まえて、その後の制度整備の進展や最新の資料を補充しながら、研究の取り纏めを行った。例えば、平成29年度においては、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードのフォローアップ等が行われた。また、会社法改正に向けた審議が法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会において行われた。これらの制度整備は、平成27年度及び28年度の研究により明らかにされた、これからなされるべき制度整備の方向、即ち、金融機関グループ支配会社の取締役会の構造につき、いわゆるモニタリングモデルに基づいて、経営者から独立した独立取締役が、内部統制部門と協力して、グループ全体のリスク管理やコンプライアンスの執行を行える体制を整えるべきこと、金融機関グループの役員が過大なリスクをとる経営を行わないようなインセンティブ構造を求める報酬規制を行う、等に沿うものであったが、しかし十分なものとは言い難い。そこでこれからなされるべき制度整備のあるべき姿と、それと比較した現在の制度整備の問題点を、論文として取り纏める作業を行った。このような作業の成果の一部は、平成29年に刊行した拙著『金融法論集(上) 金融・銀行』(商事法務、2017年)に反映されている。 なお、研究の取り纏めに当たっては、経営学や金融論の専門家、金融や法務の実務家、金融監督当局との意見交換やヒアリングを行った。これも論文に反映される予定である。
|