研究課題/領域番号 |
15K03227
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鎌野 邦樹 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (00204610)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マンション / 区分所有法 / 比較法 / アジア法 / マンション法 / 韓国法 / 中国法 / 台湾法 |
研究実績の概要 |
本研究は、研究代表者がこれまで行ってきたマンション法制(区分所有法制)に関する日本法と欧米法(10ヵ国)との比較研究の成果を踏まえて、東アジア(韓国、中国、台湾および日本)のマンション法制について比較し、各国の法制の問題状況・課題を明らかにすると共に、日本法およびその運用上の課題の解明・解決の参考にすることを目的としている。 本研究の2年目である本年度は、研究実施計画に基づき、次の研究・調査を行った。①基礎作業としては、欧米法および東アジアの立法について、最近の改正の動向を調査した。欧米法ではベルギー法の改正が進行中であり、東アジア法では韓国法の改正が進行中であることから、前者については連携研究者(吉井啓子・明治大学教授)、後者については海外研究協力者(カン・ショクシン朝鮮大学教授)の協力を得て、改正作業について情報提供を得た。②海外調査および海外との学術交流としては、(ア)5月に、韓国からカン・ショクシン朝鮮大学教授および中国から権承文・浙江工商大学教授を招請して早稲田大学にて研究会を開催し、(イ)9月に、韓国・ソウルの高麗大学にて日韓のマンション法制の比較についての基調講演を行うと共に、韓国の管理会社および大規模団地を訪問してそれぞれにおいてヒアリング調査を実施し、(ウ)12月に、韓国法務部の集合建物法の改正立法担当者が日本を訪問し、日本の法務省・国土交通省の立法担当者と、連携研究者も交えて、早稲田大学にて意見交換を行い、(エ)3月に、台湾国立大学・法律学院(大学院)の集中講義において日本・台湾のマンション法制の比較について取り上げると共に、同大学の研究者(黄詩淳教授等)との研究会を開催し、(オ)4月に、韓国住宅管理士会所属の住宅管理士13名と、早稲田大学にて、日・韓のマンション管理の実態についての意見交換をした。③以上の研究成果の本年度発表分は、後掲のとおりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記「研究実績の概要」に記載したとおり、本年度は、東アジア法のマンション法制のうち、韓国法と台湾法に関しては、直接的に学術交流をはかることができ、このことは、今後の研究にとって大きく寄与するものと考える。特に、韓国法に関しては、マンション法の経緯・背景として、法務部立法担当者と意見交換を行うことができ、また、マンション管理の現場を支える管理会社、住宅管理士および管理組合役員と直接に意見交換を行うことができたことは、当初の研究計画を超える成果であった。また、台湾法に関しては、国立台湾大学での大学院における対話を交えた集中講義を通じて、台湾と日本との「法意識」の共通性および相違を知ることができ、このことも、当初の研究計画を超える成果であった。ただ、これらの成果について本年度中には十分に発表することはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本研究の最終年度であるために、当初の計画どおり、「欧米法と東アジア法」の比較を通じて、東アジア各国の問題状況・課題の把握および日本の課題とその解決の提案という形で研究成果をまとめていきたい。その過程において、本年度の方策は次の通りである。①韓国については、前年度に引き続き集合建物法の改正法の理解につとめると共に、同法と、共同住宅法や管理の実態との関係について検討する。また、11月に、韓国・釜山での関連学会(日韓土地法学会)に出席して、報告または討議に加わる。②台湾法については、7月頃に、研究者(1名または2名)を招請等して、早稲田大学にて意見交換を行う。③中国法については、調査研究がやや遅れているので、中国から研究者(1名または2名)を招請して、早稲田大学にて意見交換を行う。④欧米法については、ベルギー法の改正が進行中であるが、12月に、同法研究の第一人者であるリェージュ大学のルコック 教授が来日する際に、早稲田大学等で研究会を開催する予定である。⑤その他、適宜、連携研究者(新たな欧米法の対象国としてカナダ法等を予定)とで研究会を開催し、また、研究の必要に応じて海外調査(例えばアメリカ、ドイツ等)を実施する。以上の①~⑤の研究調査に基づいて、研究成果をまとて発表する予定である。そのひとつとして、連携研究者と共同で、平成30年5月の日本マンション学会、または、同年6月の比較法学会にて、分科会(ミニシンポジュウム)を開催することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年秋に日本で開催する研究会に中国と台湾の研究者を招請する予定であったが、双方の日程の都合により研究会の開催が困難となったために、次年度に同招請に係る費用を使用することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度の7月~11月の間において、中国と台湾の研究者を招請して研究会を開催するために、前年度未使用額を使用する計画である。
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