本研究は、これまで行ってきたマンション法制に関する欧米法(10カ国程度)の比較法研究の成果を踏まえて、東アジア(韓国、中国、台湾、日本)のマンション法制について比較し、各国の法制の問題状況・課題を明らかにすると共に、日本の法制上の課題の解決の一助とすることを目的とするものである。 本研究の最終年度である本年度は、研究実施計画に基づき、以下の①、②の研究調査を実施し、ほぼ予定どおりの成果(③参照)を得た。①外国の立法状況の基礎調査については、韓国・中国・台湾法の現況の把握(次の②参照)のほか、特に、連携研究者(吉井啓子・明治大学教授)の協力を得て、ベルギ-の改正法を翻訳しその内容を明らかにした。②海外研究協力者との学術交流・意見交換については、(ア)7月に台湾法につき陳苑妤教授(台湾清華大学)、(イ)9月に中国法につき権承文教授(浙江工商大学)、(ウ)12月にベルギ-法につきルコック教授(リエ-ジュ大学)との間で実施した。また、(エ)12月にアメリカにて、カン・ショクシン教授(朝鮮大学)と共に、韓国・日本法とアメリカ法との比較に関する調査を実施した。以上から、次の諸点が明らかになった。(a)台湾および中国においては、特にマンションの駐車場をめぐる問題が深刻であり、台湾では建物内駐車場が区分所有の対象となるか否か、中国では公共道路との関係が問題となっている。(b)中国法では司法解釈が大きな役割を果たしている。(c)韓国法では、集合建物法(私法)と行政法との整合性が課題となる。(d)マンションの特別多数による「解消」に関しては、アメリカ法では「建物・敷地売却」が主であるのに対し、日本・韓国では「建替え」が主であるが、韓国では「リモデリング」が審議中であり、ベルギ-では他の欧州法にはない「建替え」が審議中である。③以上の研究成果の一部は、2018年5月のマンション学会で報告される。
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