本研究では第一に、ロックの社会契約論とロールズの社会契約論が、特許権という私的な独占権の正当化根拠において持つ積極的意味を明らかにした。 また第二に、合意の拘束力に関する基礎理論、すなわち法と経済学による「効率性」の思想、約束原理に表れる「権利」の思想、批判法学による「批判」の思想を検討し、それらが特許制度の社会契約的構成に与える影響を検討した。 さらに第三に、以上の検討を踏まえて、こうした「社会契約としての特許制度」という構造理解が、特許法に現在するさまざまな解釈・立法上の課題の解決にどの程度役立つのかを研究した。
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