最終年度においては前年度までの得られた知見をもとに論文としてまとめるとともに、広く成果を報告し、当研究課題の積み残しについて今後に繋げるための研究体制の構築に尽力した。 成年後見制度利用促進計画を踏まえながら、英国MCA法およびケア法におけるアドヴォカシー制度、前年度現地調査をおこなったスウェーデンにおけるコミューンが実施する後見支援の状況を踏まえ、6月に九州法学会第122回学術大会におけるシンポジウムにおいて、「高齢者の意思決定支援」との題目でパネリストとして最新状況を報告するとともに、その内容につき学会誌「九州法学会会報2017」にて論文として掲載した。また10月には立命館大学末川民事法研究会にて「決定能力を欠く者に対する医療行為の同意に関する考察」と題して研究報告をおこない、多くの示唆を得ることができた。なお本研究課題の成果については、成文堂から12月に刊行された改正民法の論文集にて「決定能力を欠く者に対する医療行為の同意に関する考察~英国およびスウェーデンの公的アドヴォカシー制度を示唆として~」として成果を総括することができた。なお当初の検討課題については概ね明らかにできたと考えるが、今後は比較法研究で示した知見の実効性を高めるために、事務管理理論に依拠し、本人の意向確認の手法としてのアドヴォカシー支援と位置づけることにより、現行法解釈内での医療同意論の再構築をおこなうことを予定している。 研究課題の地域に対する還元の側面からは大分市社会福祉協議会主催でスウェーデンにおける医療介護の意思決定支援の最新状況と成年後見利用促進計画上の中核機関のあり方について、市民後見人を中心とする地域福祉事業者に対して講演をおこなう事が出来た。 3月にはスウェーデンの研究者2名を招聘し、今後の検討の方向性につき意見交換をおこなうとともに、研究会を開催し成果を還元することができた。
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