研究課題/領域番号 |
15K03245
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
我妻 学 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (30211668)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 産科医療補償制度 / 医療事故調査制度 / 医療事故の原因分析 / 無過失補償 |
研究実績の概要 |
本研究は、2009年から施行され、2016年に7年目を迎えた産科医療補償制度の現状分析および医療紛争に関する類似の補償制度の比較法的考察からなる。 本年度は、研究対象を補償制度だけではなく、事故原因の報告・調査に関しても拡げている。2015年10月から医療事故調査制度が開始され、予期せぬ死亡事例に関し、院内事故調査が行われており、事故原因の報告・調査は医療安全を向上するための両輪であり、産科医療補償が認められた場合の原因分析などとも関係するからである。医療事故と医療事故調査に関し、我が国も含めたWHOを中心とする医療安全のための医療事故情報の共通化(Minimal Information Model for Patient Safety(MIM PS))プロジェクトおよびイギリスにおける医療事故調査制度の問題点および近時の改革を中心に行っている。その成果は、2016年11月20日に開催されている日本医事法学会のシンポジウム医療事故調査制度のでパネリストとして報告している。 2016年7月に医療紛争を専門とする患者側、医療機関側の弁護士および医療集中部の裁判官と産科医療補償制度、医療事故調査制度など近時の種々の改革を踏まえて、医療紛争の動向と問題点などについて、研究会を開催している。産科医療だけではなく、院内外で報告すべき事項が多く、報告事項も相互に必ずしも関連していないなど医療現場の負担が多いことが指摘されている。民事訴訟に関しても、東京地裁と大阪地裁の医療集中部の運用の相違点なども指摘され、有益であった。 2017年3月にルクセンブルクのEU裁判所を見学し、あわせて、マックスプランク研究所においてEU域内の問題に関し、意見交換をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、産科医療補償制度に関する基礎的研究だけではなく、医療紛争の動向と問題点に関し、2016年7月に研究会を開催している。医療紛争の患者側、医療機関側の弁護士および医療集中部の裁判官と産科医療補償制度、医療事故調査制度など近時の種々の改革を踏まえて、率直な意見交換をしている。 医療安全の観点から、医療事故報告・調査制度に関して、イギリスを中心として、比較法の考察をし、2016年11月20日に日本医事法学会のシンポでパネリストとして、報告をしている。 研究成果として、研究論文も公表しており、おおむね順調に研究計画を遂行し、研究成果を公表していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年として、2017年度は、産科医療補償制度の原因分析の調査を本格的に行う予定である。具体的な実施件数および実施方法は、日本医療機能評価機構と打ち合わせをして、進めてゆく。 比較法的考察の中心であるイギリスでは、注目すべき動向がある。2011年よりスコットランドでは、無過失補償制度の導入の議論が進められており、2014年に無過失補償の対象範囲をどのように考えるか、医療安全および医療事故報告などとの関係を慎重に検討することなどの意見書が公表されている。イングランドも同時期に無過失補償制度の導入をもともと検討していたが、予算などの関係から断念していた。しかし、2016年年末に、分娩の医療体制を向上させるとともに、救済制度として無過失補償を再び検討することを明らかにしている。現行の不法行為に基づく損害賠償は、時間と費用がかかるので、行政による救済が求められているからである。これらの状況を踏まえて、スコットランドおよびイングランドにおける無過失補償の議論を引き続き研究する予定である。ただし、イングランドのEUからの離脱および総選挙が2017年6月に前倒しされるので、必ずしも今後の動向は不透明な部分があるが、なるべく予定通り、比較研究を進めたい。韓国に関しても、無過失補償制度に関し、補充調査を行いたいが、こちらも5月に大統領選挙が予定されており、今後の動向が必ずしも明確ではないが、少なくとも理論的な研究を進めてゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
産科医療補償制度の原因分析報告書に関する分析を2017年度に実施するため。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年の産科医療補償制度の現状として、原因分析報告書の分析調査を行う。対象件数および実施方法に関しては、日本医療機能評価機構と打ち合わせを行って、具体的に研究計画を遂行したい。
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