研究課題/領域番号 |
15K03246
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
千葉 華月 北海学園大学, 法学部, 教授 (90448829)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生殖補助医療 / 体外受精 / 人工授精 / 代理懐胎 / 出自を知る権利 / 親子関係 / スウェーデン / 北欧 |
研究実績の概要 |
生殖補助医療技術の発展と普及に伴い、国内外において生殖補助医療への規制と親子関係をめぐる規律のあり方が議論されている。生殖補助医療の安全、子の福祉、安定した養育環境を確保するための有益な制度を構築する必要がある。わが国では、生殖を目的とした生殖補助医療への法規制はなく、生殖補助医療に応じた親子関係の規律に関する法整備も行われていない。生殖補助医療の規制は、日本産科婦人科学会の会告による自主規制に委ねられるが、学会員以外への拘束力はなく学会の自主規制の限界が指摘される。現在は、生殖補助医療で出生する子の身分関係については、民法の一般規定により解釈されている。 本研究では、わが国の生殖補助医療への規制のあり方と法的親子関係の規律のあり方を考察するために、北欧の生殖補助医療をめぐる法制度とそれを支える社会的制度を検討している。北欧では、生殖補助医療への法規制((スウェーデン:遺伝上のインテグリティーに関する法律(2006:351)、デンマーク:治療、診断および研究に関する生殖補助医療に関する統一法(923:2006)、ノルウェー:人への医療におけるバイオテクノロジーの利用に関する法律(2003:100) 、フィンランド:生殖補助医療に関する法律(1237:2006)))とそれに対応した親子関係の規律が整備され、生殖補助医療技術の発展に応じて関連法の見直しも行われている。法では、生殖補助医療の実施条件等が厳格に定められている。医療安全と子の福祉の確保のために、非配偶者間の生殖補助医療では、医師の特別な事前審査等も必要である。北欧では、生殖補助医療は、婚姻夫婦、同棲婚カップルのほか、レズビアンカップルにも認められている。デンマークでは、単身女性にも認められている。子の出自を知る権利は、デンマーク以外の3カ国で法制化され、地方自治体は、子が遺伝上の親を知るための支援を行う義務を負う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度は、実態調査を行うことができなかったが、文献による研究については順調に進展している。昨年度は、わが国における生殖補助医療への規制と親子関係の成立に関する文献や判例を整理し、精読した。生殖補助医療と法的親子関係に関わる制度の現状把握とこれまでの学説等の議論をまとめ、我が国における制度の問題点を整理することができた。具体的には、わが国の①生殖補助医療における規制の現状と親子関係についての民法の一般規定の解釈、②生殖補助医療に関わる判例、③厚生科学審議会報告書や学説等を検討した。 北欧4 カ国における生殖補助医療への規制法および親子関係に関する規律については、改正に向けた議論も含め整理した。北欧の中でも、スウェーデンとデンマークは、生殖補助医療に関わる法制度において先進的な取り組みを行ってきた歴史があり生殖補助医療の発展に従い、法改革も行われている。
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今後の研究の推進方策 |
文献に基づく研究はおおむね順調に進展している。今後は、文献に基づく研究を継続し、それらの検討に基づき、実態調査も行う予定である。はじめに、スウェーデンにおいて生殖補助医療の規制法と親子関係の規律、運用実態や法改革の議論について実態調査を行う予定である。(a)生殖補助医療への規制法等が制定された社会的背景、(b)生殖補助医療関係法改正のための議論、(c)親子関係の規律のあり方および親子法改正に向けた議論、(d)出自を知る権利の保障の実態、(e)地方公共団体の家族支援の役割と実態等について質問する予定である。スウェーデンでの実態調査をまとめた後は、それらで得た知見をもとに、デンマークでの実態調査も行い、比較検討することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、2015年度に海外での実態調査を計画していた。しかし、産前も産後も海外出張に行くことは難しく実態調査を行うことができなかった。そのため、海外出張費用を繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
育休終了後に2015年度行うことができなかった海外での実態調査を行う予定である。
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