北欧における生殖補助医療への法規制と親子関係の規律に関し、子の福祉の観点から研究を行い、その研究成果の一部を公表した。現在、在外研修中であり同研究を継続している。 北欧では、1980年代から生殖補助医療への規制が行われており、生殖補助医療技術の発達や社会状況に応じて生殖補助医療をめぐる法律や親子法などの関連法の改正が行われてきた(スウェーデン:遺伝上のインテグリティーに関する法律(2006:351)、デンマーク:治療、診断および研究に関する生殖補助医療に関する統一法(923:2006)、ノルウェー:人への医療におけるバイオテクノロジーの利用に関する法律(2003:100)、フィンランド:生殖補助医療に関する法律(1237:2006))。その中でもスウェーデンは近時法改正の議論が活発である。 スウェーデンでは、2016年の法改正により、婚姻夫婦、サンボ、レズビアンカップルに加え、単身女性も生殖補助医療を受けることができるようになった。カップル、個人間の平等の理念が重視され、2人の親がいることが子の最善の利益と安定した養育にとって重要であるという理念が廃止された。さらなる平等の理念の実現のために、代理懐胎の是非が議論されてきたが、政府は認めないという結論を出した。北欧では、デンマークだけが代理懐胎を認めている。 2018年の法改正により、スウェーデンでもデンマークやフィンランドと同様に精子提供、卵子提供に加え、第3者からの胚の提供が認めらられた。生殖補助医療において子は少なくとも一方の親との遺伝上のつながりを持つべきであるという理念が廃止された。出自を知る権利の実質的な保障のための規定が定められた。 家族、親子関係、血縁とは何かが問われている。夫婦、カップル、個人が決定できる範囲が拡大しており、子の最善の利益と安定した養育の確保のために公の機関の役割はなお一層重要になる。
|