科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)補助事業期間延長承認をうけて、連邦弁護士法43条a3項において弁護士の基本的義務の一つとして数え上げられている「ことに即していること(Sachlichkeit)」との取り組みをすすめるとした。この基本的義務は、弁護士としての「立ち居振る舞い」を規律するものであるが、かなり抽象的である。そこでまずは、前提となる連邦弁護士法43条が定める一般的義務「良心に従った職業実践」とは何を言うのか、これを探る作業を進めてきた。この経緯の中で、わが国弁護士法等において用いられている「品位」という概念が不明確のまま懲戒事由として用いられていることとの関係で、同条についての歴史的展開と解釈が格段の示唆に富むとの前提に立つことが許されると考え、まずはこの観点から同条の解明に取り組んだ。現在とりまとめ中であり、可及的速やかに成果を発表したい。。 これに加え、ドイツ弁護士協会主催の弁護士大会に参加して各方面の代表的弁護士から情報提供をうけ、またケルン大学弁護士法研究所の諸教授等と意見交換を行った。えられた情報に基づき、ドイツ弁護士法における重要な諸進展と取り組んだ。そのうちの一つはスポーツ法専門弁護士が新たに認証対象に加えられたことである。スポーツ法は、学際性の程度において質的に他の法領域を凌駕しており、新たな方向に向けた専門弁護士制度の展開を示すものであり、専門化に関しては著しい遅れをとるわが国に波紋を投げかけることになる。 このアクチャルな問題に直面し、ケルン大学弁護士法研究所所属准教授デッケンブロック博士を招聘し、ドイツ弁護士法の動向を中心に、情報・意見交換を行った。同准教授は、日本スポーツ法学会との共催のもと、日本比較法研究所主催のセミナー「スポーツ法専門弁護士に求められる資質」において基調報告を行った。
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